免疫制御タンパク質の多量化機構を解明
タンパク質が集まることがシグナルとなる
笠井一希 理学研究科博士課程学生(研究当時)/現 大阪大学大学院生命機能研究科特任研究員と杤尾豪人 同教授の研究グループは、自然免疫タンパク質MyD88※がシグナル伝達の際に形成する多量体の構造を解明し、「多量化によるシグナル制御」の分子機構を明らかにしました。本研究は、紺野宏記 金沢大学准教授、成田哲博 名古屋大学准教授、大西秀典 岐阜大学教授、難波啓一 大阪大学特任教授(常勤)、古寺哲幸 金沢大学教授らとの共同研究です。
病原体などから体を守る免疫システムにおいて、MyD88は受容体からのシグナルを細胞内に伝える役割を果たしています。その際、MyD88分子の「集積」が必須であることが知られていましたが、その集積の意義については十分に理解されていませんでした。本研究では、高速原子間力顕微鏡によるリアルタイム観察とクライオ電子顕微鏡による原子レベルの解析を組み合わせ、MyD88が形成する多量体の構造と、その生物学的意義を明らかにしました。MyD88は悪性リンパ腫やシュニッツラー症候群など多くの疾患に関与しています。本成果は、これら病態の分子レベルでの理解や、将来的な治療戦略の開発につながることが期待されます。
本研究成果は、2026年4月17日に国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

MyD88が形作るリング状の多量体構造
左図.高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)により捉えた多量体が一部崩壊した後に再構築されていく様子。
右図.クライオ電子顕微鏡法(cryo-EM)により明らかになった原子レベルでの多量体の詳細モデル。
詳しい研究内容について
免疫制御タンパク質の多量化機構を解明
-タンパク質が集まることがシグナルとなる-
論文情報
- 雑誌名:Nature Communications
- 論文名:Structural Mechanism of Receptor-Triggered MyD88 Oligomeric Assembly in Innate Immune Signaling
(自然免疫シグナル伝達における受容体誘導型MyD88多量体形成の構造機構) - 著 者:Kazuki Kasai, Kayo Imamura, Masatoshi Uno, Shiho Nukui, Naotaka Sekiyama, Tomoko Miyata, Fumiaki Makino, Ryusei Yamada, Yoshiki Takahashi, Noriyuki Kodera, Keiichi Namba, Hidenori Ohnishi, Akihiro Narita, Hiroki Konno, Hidehito Tochio
- DOI:10.1038/s41467-026-71836-8
用語解説
- ※ MyD88(Myeloid differentiation primary response gene 88)
シグナル伝達を仲介するアダプタータンパク質。TIRドメインとDDドメインの2つのユニットから構成される。TIRは受容体と結合後、TIR同士で多量体を形成する一方で、DDは下流の因子を集めてシグナル伝達複合体を形成する。こうして受容体による外敵の検知を細胞内へ伝える。