加齢による肝機能低下の新たな仕組みを解明
NMNが肝臓の修復細胞の老化を抑えることを発見
岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科の遠藤 智史 准教授らの研究グループは、岐阜薬科大学の五十里 彰 教授・吉野 雄太 講師・坂 智文 大学院生(日本学術振興会 特別研究員DC1)、名古屋市立大学の中川 秀彦 教授・川口 充康 准教授、アピ株式会社との共同研究で、肝臓の修復に不可欠な「肝星細胞」※1の機能維持におけるβ-ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)※2の有効性を明らかにしました。
肝星細胞が老化すると、正常な修復機能が失われるだけでなく、炎症因子の放出や過剰な脂質蓄積を引き起こし、肝線維化や肝がんへと進行するリスクが高まります。本成果は、加齢に伴う肝機能低下や肝線維化に対する、NMNを用いた新たな予防法の開発に貢献することが期待されます。
本研究成果は、現地時間2026年3月6日に、毒性学・生化学分野の国際誌『Chemico-Biological interactions』のオンライン版で発表されました。

本研究のポイント
- 加齢や酸化ストレスによって生じる有害なアルデヒド(4-ヒドロキシノネナール:HNE)※3が、肝臓の修復を担う肝星細胞の細胞老化と脂質蓄積を誘導し、肝臓の再生能力を低下させることを明らかにしました。
- 次世代のエイジングケア成分として注目されるβ-ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)が、長寿遺伝子サーチュイン1(SIRT1)※4の活性を回復させることで、HNEによる細胞老化を強力に抑制することを見いだしました。
- NMNは、SIRT1を介して脂質代謝酵素の発現を維持し、肝星細胞内への過剰な脂質蓄積を防ぐという、新たな作用メカニズムを解明しました。
詳しい研究内容について
加齢による肝機能低下の新たな仕組みを解明
- NMNが肝臓の修復細胞の老化を抑えることを発見 -
論文情報
- 雑誌名:Chemico-Biological Interactions
- 論文名:β-Nicotinamide Mononucleotide Prevents Senescence and Lipid Accumulation in Hepatic Stellate Cells by Restoring SIRT1 Function
- 著 者:Tomofumi Saka, Riri Hayashi, Yuta Yoshino, Taichi Mitsui, Hiroe Maruyama, Hiroyuki Kono, Mitsuyasu Kawaguchi, Hidehiko Nakagawa, Akira Ikari, and Satoshi Endo
- DOI:10.1016/j.cbi.2026.112012
用語解説
- ※1 肝星細胞
肝臓に存在する細胞で、通常はビタミンAを貯蔵していますが、肝損傷時には活性化して肝再生や修復に関与します。 - ※2 β-ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)
体内でエネルギー代謝に不可欠な補酵素NAD+へと変換されます。長寿遺伝子SIRT1を活性化する働きがあり、抗老化(エイジングケア)の鍵を握る成分として注目されています。 - ※3 4-ヒドロキシノネナール(HNE)
脂質が酸化される過程で生成される有害なアルデヒドで、細胞毒性や老化を誘導します。 - ※4 サーチュイン1(SIRT1)
長寿遺伝子(サーチュイン)の一種で、細胞の代謝調節やDNA修復、老化抑制に重要な役割を果たす酵素です。