研究・採択情報

再侵入を許さない!沖縄県久米島におけるアリモドキゾウムシの迅速な根絶事例

 岐阜大学応用生物科学部の日室千尋 准教授、沖縄県病害虫防除技術センターの清水優子主任研究員(当時)らの研究グループは、2012年に世界で初めて不妊虫放飼法(注1)によって根絶されたアリモドキゾウムシ(注2:写真)が、2021年に沖縄県久米島へ再侵入した事例について報告しました。本研究では、検出から再根絶に至るプロセスを詳述するとともに、迅速な初動防除が防疫上極めて有効であることを科学的に明らかにしたものです。
 本研究成果は、日本時間2026年1月29日にApplied Entomology and Zoology誌のオンライン版で発表されました。

アリモドキゾウムシ

本研究のポイント

  • 2012年に根絶した久米島のアリモドキゾウムシが2021年に再侵入した事例について、検出から再根絶までの過程と、迅速な防除対応の有効性を検証しました。
  • 過去の国内侵入事例との比較解析から、本事例はこれまでにない短期間での根絶が達成され、防除効率が極めて高いことを示しました。
  • 本成果は、国内外における侵入害虫の早期警戒・迅速対応(EDRR)体制の構築に貢献し、将来的な農業被害および防除コストの低減に資するものです。
  • アリモドキゾウムシの侵入は、もはや南西諸島だけの問題ではなく、今回の成果は、日本本土のサツマイモ産地にとっても"次は自分たちかもしれない"という現実的な警鐘となります。

詳しい研究内容について

再侵入を許さない!沖縄県久米島におけるアリモドキゾウムシの迅速な根絶事例

論文情報

  • 雑誌名:Applied Entomology and Zoology
  • 論文名:Successful control in the first recapture of the sweet potato weevil Cylas formicarius (Coleoptera: Brentidae) since its eradication from Kume Island, Japan
    アリモドキゾウムシ根絶後の久米島で初となる再侵入と、迅速な防除による再根絶成功事例
  • 著 者:Yuko Shimizu*, Dai Haraguchi, Yoshifumi Awaguni, Chihiro Himuro*
    清水優子*、原口大、粟国佳史、日室千尋*
  • DOI:10.1007/s13355-026-00959-7

用語解説

  • 注1 不妊虫放飼法
    害虫管理方法の1つ。対象害虫を大量に増殖し、放射線等で不妊化し野外へ放すことで野生虫同士の交尾を妨げ、繁殖を阻害、害虫密度を抑制し、やがて根絶に至らせる手段である。この方法によって、日本では1993年に琉球列島でウリミバエBactrocera cucurbitae、2012年に沖縄県久米島、2020年に津堅島でアリモドキゾウムシ Cylas formicuriusの根絶が達成された(Himuro et al. 2022, Ikegawa et al. 2022)。アリモドキゾウムシの根絶事例は世界初であり、農薬などと違って環境負荷が少ない害虫管理法として世界で注目されている。
  • 注2 アリモドキゾウムシ Cylas formicurius
    体長約6mmのゾウムシの1種。熱帯、亜熱帯地域に広く分布するサツマイモの重要な世界的害虫。日本の侵略的外来種ワースト100に選定されている。日本国内ではトカラ列島以南の南西諸島、及び小笠原諸島に分布する。食害されたサツマイモは有害物質イポメアマロンを産出するため、人畜にとって有害となり、その経済的損失は、世界中で年間100万ドル以上と言われている。この害虫が存在する地域からのサツマイモの移動は厳しく制限されるため、輸出入や流通面でも大きな損失が生じる。2022年10月には静岡県浜松市の沿岸部で本州初の侵入が確認され、サツマイモの農業・流通に致命的な被害をもたらすアリモドキゾウムシは、もはや「南西諸島だけの問題」ではなくなっている。