研究・採択情報

血液のがん・白血病の新しい治療標的を同定!

「ニッチ標的型抗がん剤の創製」へ

 岐阜薬科大学薬理学研究室の吉本誠 大学院生/SPRINGスカラシップ研究学生/米国コロンビア大学客員研究員、岐阜薬科大学薬理学研究室・岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科・岐阜大学高等研究院One Medicineトランスレーショナルリサーチセンター(COMIT)の檜井栄一教授らの研究グループは、米国コロンビア大学のStavroula Kousteni教授、岐阜大学の犬房春彦教授、金沢大学の平尾敦教授との共同研究により、白血病の進展を制御するシグナルを発見しました。
 急性骨髄性白血病(AML)は、がん化したAML細胞が異常に増える"血液のがん"です。AML細胞は、私たちの体の中で、単独で活動しておらず、微小環境=ニッチ※1という場所で、様々な細胞に囲まれて活動しています。
 一方、骨芽細胞は、骨を造る細胞として良く知られていますが、骨の中でニッチを構成する細胞としても働いており、AML細胞の機能を調節する働きがあることも知られています。したがって、AML細胞を支える"骨芽細胞(=ニッチ細胞※2)"の適切な制御が、AMLの治療成績向上に貢献することが期待されます。しかしながらこれまでに、「骨芽細胞の何のシグナルをターゲットにすることで、AML細胞の機能を抑制し、AML進展を制圧できるのか?」について、詳細は明らかになっていませんでした。
 研究グループは、AML患者およびAMLモデル動物の骨芽細胞において、mTORC1シグナル※3が活性化していることを発見しました。さらに、遺伝子改変動物※4を用いた解析やバイオインフォマティクス※5解析などにより、骨芽細胞のmTORC1シグナルがAML細胞の機能調節やAML進展に重要であることを明らかにしました。
 本研究成果は、骨芽細胞のmTORC1シグナルがAML治療における有望な創薬ターゲットとなる可能性を明らかにしたものであり、AMLだけでなく、様々な難治性がんの治療成績向上を指向する「ニッチ標的型抗がん剤の創製」に繋がることが期待されます。
 本研究成果は、米国学術雑誌『iScience』に掲載されました(オンライン版公開日:日本時間2025年12月24日)。

ニッチ細胞の制御はAMLの治療成績の向上や根治に重要である
骨芽細胞 (=ニッチ細胞) のmTORC1-IL6シグナルは、AMLに対する新規創薬標的候補となる

詳しい研究内容について

血液のがん・白血病の新しい治療標的を同定!
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論文情報

  • 雑誌名:iScience
  • 論文名:Regulatory role of mTORC1 signaling in osteoblasts in acute myeloid leukemia progression and steady-state hematopoiesis
  • 著 者:Kazuya Fukasawa, Kazuya Tokumura, Makoto Yoshimoto, Koki Sadamori, Ioanna Mosialou, Yoshiaki Harakawa, Kazuto Isawa, Shohei Tsuji, Haruhiko Inufusa, Atsushi Hirao, Stavroula Kousteni, Eiichi Hinoi
  • DOI:10.1016/j.isci.2025.114533

用語解説

  • ※1 ニッチ
    がん細胞などの特定の細胞を維持したり、その機能を調節する"場所=微小環境"。
  • ※2 ニッチ細胞
    ニッチを構成する細胞。骨芽細胞や血管内皮細胞などが含まれる。
  • ※3 mTORC1シグナル
    細胞の成長、増殖、生存、分化など様々な機能を調節しているタンパク質複合体。
  • ※4 遺伝子改変動物
    遺伝子工学の手法を用いて、人為的に遺伝情報を改変した動物。生命科学研究において欠かせない実験ツールの1つ。
  • ※5 バイオインフォマティクス
    生命科学と情報科学の融合分野。生命がもつ「情報」を基に、生命現象を解き明かそうとする学問。