幅広い年代で血糖値が改善!新しい糖尿病治療薬「イメグリミン」の有効性を実臨床データで確認
メトホルミンとの安全な併用用量を提案
岐阜大学大学院医学系研究科 糖尿病・内分泌代謝内科学の藤澤太郎大学院生、加藤丈博准教授、恒川新教授、中部国際医療センターの髙見和久糖尿病センター長、京都大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科の矢部大介教授らの研究グループは、新規糖尿病治療薬イメグリミンの実臨床における効果と安全性を検証しました。
イメグリミン*1は、インスリンの働きを助けるとともに、細胞内のミトコンドリア*2の働きを整えることで血糖値を下げることが期待される新しいタイプの薬です。しかし、発売から日が浅く、特に高齢者での実臨床データは不足していました。
本研究では、イメグリミンを1年以上継続した79人の2型糖尿病患者を後方視的に解析し、年齢層別の有効性・安全性およびメトホルミン*3併用時の消化器症状増加の要因について検討しました。
本研究の結果、75歳以上を含むすべて年齢層でイメグリミンは同等の有効性と安全性を示し、血糖値の改善だけでなく、体重や脂質、肝機能など幅広い代謝指標にも良い影響を与えることを示しました。さらにメトホルミン1,000 mg/日以上との併用で消化器症状が有意に増加した一方、750 mg/日以下では安全に併用できる可能性が示されました。
高齢者は薬剤選択が難しいことが多く、安全性が確認されたことは実臨床において大きな意味があります。イメグリミンは、体への負担が比較的少なく、複数の代謝改善作用を持つ新しいタイプの薬剤です。今回の結果は、日常診療における有望な選択肢としての可能性をさらに裏付けるものとなりました。
本研究成果は、現地時間2025年12月16日にFrontiers in Clinical Diabetes and Healthcare誌で発表されました。
年齢別におけるイメグリミンの有効性の比較
本研究のポイント
- 糖尿病治療薬イメグリミンは、若年層から75歳以上の高齢者まで、1年間にわたり安定した血糖改善効果を示したことを実臨床データで確認しました。
- 体重、中性脂肪、肝酵素などの複数の代謝指標も同時に改善し、血糖マネジメントに加え、包括的な代謝改善効果が示唆されました。
- メトホルミンとの併用は概ね安全である一方、1,000 mg/日以上の高用量では消化器症状が増加し、750 mg/日以下での併用がより安全である可能性が示されました。
詳しい研究内容について
幅広い年代で血糖値が改善!新しい糖尿病治療薬「イメグリミン」の有効性を実臨床データで確認
-メトホルミンとの安全な併用用量を提案-
論文情報
- 雑誌名:Frontiers in Clinical Diabetes and Healthcare
- 論文名:Real-World Effectiveness and Safety of Imeglimin: A Single-Center Retrospective Cohort Study in Japan
- 著 者:Taro Fujisawa, Takehiro Kato*, Kazuhisa Takami, Shinya Fukuda, Risako Imai, Tomoya Kawashima, Ryosuke Horita, Katsuhisa Sakai, Akiko Yamada, Shin Tsunekawa, Daisuke Yabe(*Corresponding author)
- DOI:10.3389/fcdhc.2025.1694522
用語解説
- *1 イメグリミン
膵臓にあるβ細胞を刺激してインスリンの分泌を促し、血糖値を改善します。また、細胞内のエネルギー工場と呼ばれる「ミトコンドリア」の働きを整えることで肝臓や筋肉での糖の取り込みを促すことでも、血糖値を改善する効果があります。 - *2 ミトコンドリア
細胞の中にある「エネルギー生産工場」のような存在であり、イメグリミンは、この機能を整えることで、血糖値の調節に寄与すると考えられています。 - *3 メトホルミン
世界的にも最も使用されている糖尿病治療薬のひとつです。イメグリミンと類似した化学構造式であり、併用時に消化器症状が増えやすいことが知られています。