研究・採択情報

CO₂を吸収してプラスチックに変わるゴムを発明

CO₂を利用した光学的情報記録材料としても期待

 近年、持続可能な社会を目指し、主要な温室効果ガスである二酸化炭素(CO₂)の空気中からの回収、貯留、さらに回収したCO₂の有効活用技術の開発が進められています。
 岐阜大学工学部の三輪 洋平 教授、工学研究科博士課程1年の岡田 和真さん、自然科学技術研究科修士課程1年の林 拓海さんらの研究グループは、横浜国立大学の中野 健 教授、大久保 光 准教授、信州大学の山本 勝宏 教授、名古屋市立大学の高瀬 弘嗣 博士との共同研究で、CO₂を吸収すると硬く、そして強靭なプラスチックに変化するエラストマー注1)を開発しました。このエラストマーはCO₂によって蛍光注2)の発光強度(輝き)が増大するため、CO₂の供給と除去によって光学的な情報の記録と消去が可能な材料としての活用も期待されます。
 本研究によって、「材料の機能制御のためのCO₂利用」という新しい視点からのCO₂の有効活用用途の開拓が期待されます。
 本研究成果は、日本時間2025年11月11日(火)にNature Communications誌オンライン版で発表されました。

図

本研究のポイント

  • CO₂吸収によって1000倍以上硬化してプラスチックへと変化する一方で、加熱によってCO₂を取り除くと元の柔軟な状態に戻るエラストマーを発明しました。
  • このエラストマーは1gで約220mgのCO₂を吸収するフレキシブルなシート状吸収材料としても応用可能です。
  • このエラストマーは、CO₂を吹き付けると表面の摩擦が瞬時に低下する性質があり、摩擦特性をコントロールできる機能性コーティングとして期待されます。
  • このエラストマーは、CO₂を吸収すると蛍光発光強度が大きく増加する性質があり、光学的な情報の表示と記録が可能な材料としての応用が期待されます。

詳しい研究内容について

CO₂を吸収してプラスチックに変わるゴムを発明
~CO₂を利用した光学的情報記録材料としても期待~

論文情報

  • 雑誌名:Nature Communications
  • 論文名:CO₂-triggered reversible transformation of soft elastomers into rigid and highly fluorescent plastics
  • 著 者:Yohei Miwa, Kazuma Okada, Takumi Hayashi, Kei Hashimoto, Hikaru Okubo, Hiroshi Takase, Katsuhiro Yamamoto, Ken Nakano, and Shoichi Kutsumizu
  • DOI:10.1038/s41467-025-65495-4

用語解説

  • 注1)エラストマー
    一般的に、日常では"ゴム"と呼ばれています。エラストマーとは、伸縮性と弾力に富んだポリマー材料のことです。
  • 注2)蛍光
    蛍光とは、物質がある波長の光を吸収して、すぐに別の波長の光を放つ現象です。本研究のエラストマーは、UVを照射すると青色に輝きます。