タンニンのタンパク質凝集メカニズムの解明に成功
タンパク質の凝集の関与する生命現象や生理活性分子の活性メカニズムの解明に期待
岐阜大学応用生物科学部山内恒生准教授らの研究グループは複数分子同時分子動力学シミュレーションによりタンニンのタンパク質凝集過程の再現に成功しました。
天然由来の生物活性分子の中には、タンパク質の特定の位置に結合することで活性を制御する化合物と、タンパク質の様々な場所に結合し凝集を生じることにより活性を示す化合物が存在します。特定の位置に結合する化合物はすでに、結合箇所を明らかにする方法により、相互作用の分子メカニズムが解明されてきました。一方で、凝集を生じることで活性を示す化合物とタンパク質の相互作用は、複雑で、分子レベルでどのように相互作用しているかを明らかにすることができませんでした。タンニン注1)は、代表的なポリフェノールのひとつであり、タンパク質の凝集により生物活性を示す天然由来分子の代表的な化合物です。このため世界中の研究者がタンニンのタンパク質相互作用様式の解明を試みてきましたが、実際の溶液中で3次元構造をもつタンパク質との相互作用様式は明らかにされていませんでした。本研究では、代表的な加水分解性タンニンであるトリガロイルグルコース(TGG)とコラーゲン分解酵素であるmatrix metalloproteinase-1(MMP-1) 注2)の凝集過程を分子動力学(MD)シミュレーション注3)により可視化することに成功しました。さらに、MDシミュレーション結果と、HSQC NMR法注4)による実験的なデータは一致することがわかりました。これは、MDシミュレーションによるTGGとタンパク質の凝集過程の可視化が信頼できることを示すものであり、さらに本方法がタンパク質の凝集を生じることにより活性を示す化合物の作用様式を解明する方法として有用であることが示すものです。今後、同様の方法は、これまで明らかにできなかったタンパク質の凝集の関与する生命現象解明に寄与することが期待されます。
本研究成果は、日本現地時間2025年7月25日に英国の国際誌であるFood Chemistry誌のオンライン版で発表されました。

タンニンとタンパク質のMDシミュレーション(A、B)とドッキングシミュレーション(C)の結果
本研究のポイント
- 複数分子同時分子動力学シミュレーションによりタンニンのタンパク質凝集過程の再現に成功しました。
- NMR法を用いた実験結果は、このシミュレーション結果を支持しました。
- 本方法は、タンパク質の凝集を通じて生物活性を示す化合物の機構の解明に寄与することが期待されます。
- さらに本方法は、より広範囲のタンパク質の凝集の関与する生命現象解明に寄与することが期待されます。
詳しい研究内容について
タンニンのタンパク質凝集メカニズムの解明に成功~タンパク質の凝集の関与する生命現象や生理活性分子の活性メカニズムの解明に期待~
論文情報
- 雑誌名:Food Chemistry
- 論文名:Protein-tannins binding mode in hydrolysable tannins-induced protein aggregation
- 著 者:Mana Yoshimura, Yoshiki Sugahara, Kana Nagase, Miho Kobayashi, Yuji O. Kamatari, Kosei Yamauchi*
- DOI:10.1016/j.foodchem.2025.145672
- 論文公開URL:https://doi.org/10.1016/j.foodchem.2025.145672
用語解説
- 注1)タンニン:
植物中に広く分布するポリフェノールの一種。加水分解性タンニンと縮合型タンニンに大別される。縮合型タンニンはカテキン類が重合した構造をもち、タンパク質との強い相互作用を示す。 - 注2)MMP-1:
コラーゲン分解酵素のひとつ。コラーゲンを分解することで癌細胞の転移や、しわの原因となることが知られている。 - 注3)MDシミュレーション:
連続して分子にかかる力及び運動を計算することで、分子の動きを可視化することができるシミュレーション。 - 注4)核磁気共鳴分光 (NMR):
化合物に磁場を与えることにより、その構造を測定する方法。低分子化合物やタンパク質などありとあらゆる分子の構造解析に用いられている。