腸アルカリ性ホスファターゼはコレステロール低減化ペンタペプチド(IIAEK)の受容体であり、マウスのコレステロール恒常性を制御する
腸アルカリ性ホスファターゼは酵素の機能だけではなく、受容体として機能する
食物タンパク質は、腸でアミノ酸またはペプチドとして吸収されます。ジペプチドまたはトリペプチドは、腸ペプチドトランスポーター1(PepT1)を介して吸収されます。しかし、テトラペプチドよりも大きなオリゴペプチドの腸管における吸収担体あるいは分子標的3)は未だ不明であり、現在のタンパク質ペプチド栄養学における大きな謎となっています。本研究は、オリゴペプチドIIAEKを用いて、腸アルカリ性ホスファターゼ(IAP)のコレステロール代謝制御における未解明の機能を探ることを目的としました。通常の野生型マウスでは、IIAEK摂取によるコレステロール代謝改善作用が観察されます。しかし、IAP欠損マウス(Akp3-/-)マウスでは、IIAEK摂取によるコレステロール代謝改善作用(血清や肝臓のコレステロール低下作用)は認められませんでした。また、IIAEKはマウスIAP(Akp3)およびヒトIAPの基質認識部位と特異的に相互作用することを明らかにしました。IIAEK-ヒトIAP複合体は、腸に存在する膜貫通糖タンパク質カドヘリン17と相互作用します。結論として、IAPはペンタペプチドIIAEKによるコレステロール代謝改善作用に必須であり、脱リン酸化酵素(ホスファターゼ)として機能するだけでなく、IIAEKのグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型特異的受容体としても機能することを実証しました。同時に、ヒトカドヘリン17がIIAEK-ヒトIAP複合体におけるシグナル伝達に重要な役割を果たすことを発見しました。
本研究成果は、日本時間2025年7月1日18時に英国の国際誌「Scientific Reports」オンライン版で発表されました

研究成果図
本研究のポイント
- 我々が世界で最初に発見したコレステロール低減化ペンタペプチド(IIAEK)の受容体が腸アルカリ性ホスファターゼ1)(Akp3)であることを世界で最初に特定しました。
- 腸アルカリ性ホスファターゼ(Akp3)は、脱リン酸化反応を触媒する酵素であるばかりではなく、オリゴペプチド2)受容体として機能することを世界で最初に発見しました。
- 生体内で機能するオリゴペプチド受容体に関する報告は、本論文が世界最初です。
詳しい研究内容について
腸アルカリ性ホスファターゼはコレステロール低減化ペンタペプチド(IIAEK)の受容体であり、マウスのコレステロール恒常性を制御する。
論文情報
- 雑誌名:Scientific Reports
- 論文名:Intestinal alkaline phosphatase is a receptor for cholesterol lowering pentapeptide IIAEK and regulates cholesterol homeostasis in mice.
- 著 者:Asahi Takeuchi, Natsuki Oda, Keigo Takada, Ryosuke Mori, Takumi Aida, Arata Banno, Akio Ebihara & Satoshi Nagaoka
- DOI:10.1038/s41598-025-04722-w
本研究は科学研究費助成事業(科研費)の基盤研究 (A) 20H00570及び基盤研究(A)24H00676の支援を受けました。