層厚を制御した人工強磁性細線の作製に成功 ―人工強磁性細線を利用した大容量メモリや磁気センサ開発へ道筋―
岐阜大学 大学院自然科学技術研究科の修士課程1年の川名梨央さん、修士課程修了生(令和5年度)大口奈都子さん、工学部 山田啓介 准教授、吉田道之 助教、杉浦隆 教授、嶋睦宏 教授と名古屋大学、早稲田大学、京都大学の研究グループは、層厚を制御した多層構造をもつ人工強磁性細線[1]の作製を二浴電析(電気めっき)法[2]と細孔ナノテンプレートを用いて成功しました。層厚は数100nmから最小で約3.5nmの多層構造を有する人工強磁性細線が作製できました。さらに研究グループでは、1本の人工強磁性細線の磁気抵抗を測定し、人工強磁性細線の層厚が薄くなるほど、磁気抵抗比が増大することを確認しました。本研究の成果は、人工強磁性細線を利用する次世代磁気メモリや磁気センサの開発化へ道筋を開くものです。
本研究成果は、2025年3月20日(木)付でApplied Physics Expressに掲載されました。

(左図)実験で用いた二浴電析法の概念図。(右図)層厚の異なる人工強磁性細線の観察結果。Co71Pt29合金とCo13Pt87合金の1層の厚さの平均膜厚が、それぞれ約80,35,17,3.5nmの人工強磁性細線が綺麗に作製できています。
本研究のポイント
- 層厚を制御した多層構造をもつ人工強磁性細線を二浴電析法により作製に成功した。
- 層厚は最小で約3.5 nmの人工強磁性細線を作製できた。
- 人工強磁性細線を利用した大容量メモリや磁気センサ開発へ道筋を開いた。
詳しい研究内容について
層厚を制御した人工強磁性細線の作製に成功 ―人工強磁性細線を利用した大容量メモリや磁気センサ開発へ道筋―
論文情報
- 雑誌名:Applied Physics Express
- 論文名:Artificial control of layer thickness in Co-Pt alloy multilayer nanowires fabricated by dual-bath electrodeposition in nanoporous polycarbonate membranes
- 著 者:Rio Kawana, Natsuko Oguchi, Daiki Oshima, Michiyuki Yoshida, Takashi Sugiura, Mikiko Saito, Takayuki Homma, Takeshi Kato, Teruo Ono, Mutsuhiro Shima, and Keisuke Yamada
- DOI:10.35848/1882-0786/adbcf6
用語解説
- [1] 人工強磁性細線:
組成の異なる強磁性金属同士の層厚がnmオーダーで多層構造になった細線のこと。1980年代頃から研究が始まった「人工格子」(各層の厚さを原子層単位で制御して積層した人工的多層膜のこと)になぞらえて「人工強磁性細線」と名付けた。 - [2] 二浴電析法:
2種類の電解質溶液を利用して電析する手法。異なる電解質溶液で電析を行い、異なる物質を積層させることができる技術。一方で、積層させる電極などを異なる電解質溶液間で物理的に移動させる必要がある。