軟骨無形成症に対する新規治療薬の候補を発見! -「難治性骨系統疾患の根治法の確立」につながる成果-
岐阜薬科大学薬理学研究室・岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科・岐阜大学高等研究院One Medicineトランスレーショナルリサーチセンター(COMIT)の檜井栄一教授、岐阜薬科大学薬理学研究室の貞盛耕生大学院生(JST次世代研究者挑戦的研究プログラム研究学生)、久保拓也学部生らの研究グループは、北里大学、京都薬品工業株式会社、東京大学との共同研究により、CDK8(※1)阻害剤が軟骨無形成症に対する新規治療薬となる可能性を見い出しました。
軟骨無形成症(Achondroplasia)は、およそ20,000人に1人の割合で発生するといわれている希少性かつ難治性の骨系統疾患です。FGFR3(※2)遺伝子の変異による軟骨細胞の機能異常により、手や足の短縮を伴う低身長や特徴的な顔立ちを呈します。成人身長は125~130 cmであり、日常生活で多くの制約を受けるとともに、様々な合併症がでてきます。軟骨無形成症の治療薬としてボソリチドが承認されていますが、新生児や乳幼児を中心とする患者への安全かつ負担の少ない治療法の確立は、喫緊の課題といえます。
研究グループは、CDK8が軟骨無形成症の病態進展に寄与することを発見し、CDK8が軟骨無形成症治療における有望な創薬ターゲットとなることを明らかにしました。本研究成果は、様々な難治性骨系統疾患の『根治』を指向とした新規治療法の確立に貢献することが期待されます。
本研究成果は、国際学術誌『Biochimica et Biophysica Acta - Molecular Basis of Disease』に掲載されました(オンライン版公開日:日本時間 2024年12月13日)。

発表のポイント
- 軟骨無形成症に対する安全かつ体への負担の少ない治療法の開発が望まれています。
- 軟骨無形成症の軟骨細胞においてCDK8の発現が増加することを見い出しました。
- 研究グループが独自に開発したCDK8阻害剤KY-065を用いることで、軟骨無形成症の軟骨機能が回復し、長管骨が伸長することが確認できました。
- 本成果は、軟骨無形成症に対する新たな知見・解決法を提供するとともに、難治性骨系統疾患の予防・治療法の確立に貢献することが期待されます。
詳しい研究内容について
軟骨無形成症に対する新規治療薬の候補を発見! -「難治性骨系統疾患の根治法の確立」につながる成果-
本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業 基盤研究B(一般・特設)(研究代表者:檜井栄一)、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業(研究代表者:檜井栄一)などの支援を受けて行ったものです。
論文情報
- 雑誌名:Biochimica et Biophysica Acta - Molecular Basis of Disease
- 論文名:
CDK8 inhibitor KY-065 rescues skeletal abnormalities in achondroplasia model mice(CDK8阻害剤KY-065は軟骨無形成症モデルマウスの骨格異常を改善する) - 著 者:Koki Sadamori, Takuya Kubo, Tomoki Yoshida, Megumi Yamamoto, Yui Shibata, Kazuya Fukasawa, Kazuya Tokumura, Tetsuhiro Horie, Takuya Kadota, Ryotaro Yamakawa, Hironori Hojo, Nobutada Tanaka, Tatsuya Kitao, Hiroaki Shirahase, and Eiichi Hinoi.
(貞盛耕生, 久保拓也(同等筆頭著者), 吉田智喜, 山本めぐみ, 柴田結衣, 深澤和也, 徳村和也, 堀江哲寛, 門田卓也, 山川遼太郎, 北條 宏徳, 田中信忠, 北尾達哉, 白波瀬弘明, 檜井栄一)
用語解説
- ※1 Cyclin-dependent kinase 8(CDK8):
CDKと呼ばれるリン酸化酵素の遺伝子グループの一つ。CDK遺伝子の8番目。近年、がん幹細胞や間葉系幹細胞の幹細胞性を制御することが報告されている。 - *2 Fibroblast growth factor receptor 3(FGFR3):
細胞の表面に存在するタンパク質。軟骨無形成症の95%以上の患者にG380R変異(380番目のグリシンがアルギニンに変異)が認められ、過剰なFGFR3シグナルが入力する。