DPP-4阻害薬が関連する水疱性類天疱瘡は通常の水疱性類天疱瘡と異なる特徴を有する ~病態解明への貢献を期待~
岐阜大学大学院医学系研究科の岩田浩明教授と北海道大学大学院医学研究院の氏家韻欣客員研究員、氏家英之教授らとの研究グループは、DPP-4阻害薬*1に関連する水疱性類天疱瘡*2が、通常の(DPP-4阻害薬が関連しない)水疱性類天疱瘡とは異なる特徴を有し、HLA*3-DQB1*03:01を有する群において、その特徴はより顕著となることを明らかにしました。
水疱性類天疱瘡は高齢者に発症しやすい自己免疫性水疱症の一つです。原因は不明ですが、薬剤との関連も報告されており、近年では2型糖尿病治療薬であるDPP-4阻害薬を服用中の方で水疱性類天疱瘡の発症頻度が高いことが分かっています。しかし、DPP-4阻害薬に関連した水疱性類天疱瘡が、通常の水疱性類天疱瘡と異なるかどうかについては、未だ意見が分かれています。
本研究グループは、DPP-4阻害薬が関連する水疱性類天疱瘡では、紅斑の少ない非炎症型を示す例が多く、血中の自己抗体*4(抗BP180NC16a抗体)や好酸球数が少ないことを明らかにしました。また、標準的な治療法であるステロイド内服を必要とする例が少なく、これらの特徴は、HLA-DQB1*03:01を有する群でより顕著となることを明らかにしました。
今回の研究結果は、DPP-4阻害薬が関連する水疱性類天疱瘡と通常の水疱性類天疱瘡は、発症機序や病態が異なる可能性があることを示しており、今後の病態の解明やより負担の少ない適切な治療選択につながる一助となることを期待しています。
なお、本研究成果は、2024年11月22日(金)公開のJournal of the American Academy of Dermatology誌にオンライン掲載されました。
発表のポイント
- DPP-4阻害薬が関連する水疱性類天疱瘡は、通常の水疱性類天疱瘡とは異なる特徴を有する。
- HLA-DQB1*03:01を有する群では、この特徴はより顕著に。
- 病態の解明及び適切な治療選択への貢献に期待。
詳しい研究内容について
DPP-4阻害薬が関連する水疱性類天疱瘡は通常の水疱性類天疱瘡と異なる特徴を有する
~病態解明への貢献を期待~
本研究の実施にあたり、HLA解析にご協力いただいた理化学研究所 生命医科学研究所の大関健志博士と莚田泰誠博士に深謝いたします。本研究はJSPS科研費JP21H02938、日本医療研究開発機構(AMED)JP20ek0109430、厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)、上原記念生命科学財団、北海道大学(新たな学際領域を生み出す異分野融合研究拠点をコアにした若手研究者育成)の助成を受けたものです。
論文情報
- 雑誌名:Journal of the American Academy of Dermatology(皮膚科学の専門誌)
- 論文名:
Clinical characteristics and outcomes of dipeptidyl peptidase-4 inhibitor-associated bullous pemphigoid patients: A retrospective study(DPP4阻害薬が関連する水疱性類天疱瘡の臨床的特徴と経過) - 著 者:氏家韻欣1、片山 奨1、眞井洋輔1、眞井翔子1、葭本倫大1、村松 憲1、岩田浩明2、泉健太郎1、氏家英之1
1 北海道大学大学院医学研究院皮膚科学教室
2 岐阜大学大学院医学系研究科感覚運動医学講座皮膚科学分野 - DOI:10.1016/j.jaad.2024.09.067
用語解説
- *1 DPP-4阻害薬: 糖尿病治療薬の一つ。低血糖を起こしにくく、広く用いられている。
- *2 水疱性類天疱瘡: 自己免疫性水疱症の一つ。高齢者に発症しやすく、皮膚や粘膜のびらん/水疱、かゆみを伴う紅斑が特徴的である。
- *3 HLA: Human Leucocyte Antigenの略。ヒトの主要組織適合遺伝子複合体と呼ばれる遺伝子群のこと。HLAは免疫に関わる重要な因子であり、移植や自己免疫疾患などに関係する。
- *4 自己抗体: 自己の細胞など自分のからだの成分に対する抗体のこと。自己免疫疾患の原因となることがある。