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肝硬変患者における急性腎障害発症は予後を悪化させる:アミノ酸インバランスの重要性

 肝硬変患者は急性腎障害(acute kidney injury; AKI)1)を発症するリスクが高いことが知られています。したがって、肝硬変患者におけるAKIの実態や予後との関係を調査し、そのリスク因子を明らかにすることで肝硬変患者におけるAKIの予防や早期発見につなげる必要性があります。岐阜大学大学院医学系研究科消化器内科学分野 清水雅仁教授、三輪貴生医師らのグループは、肝硬変患者におけるAKIについて多機関共同研究により調査を行いました。
 三輪貴生医師らの研究により本邦の肝硬変患者の約27%がAKIを発症し、AKI を発症することで肝硬変患者の予後が有意に悪化することが示されました。またAKI発症に関連する因子としてアミノ酸インバランス2)、アルコール関連肝疾患3)、代謝異常関連脂肪性肝疾患4)が関連することが示唆されました。本研究成果から、本邦の肝硬変患者におけるAKIの予後に対する臨床意義やそのリスク因子が明らかとなり、将来のAKIの予防と健康寿命の伸長に寄与することが期待されます。
 本研究成果は、日本時間2024年6月11日にJournal of Gastroenterology誌で発表されました。


発表のポイント

  • 本研究では、567名の肝硬変患者を対象として、AKIの発症率と予後に与える影響、そのリスク因子について調査した。
  • 対象患者におけるAKIの累積発生率は1年で14%、3年で23%、5年で29%であり、AKIを発症した肝硬変患者は、発症しなかった者と比較してハザード比5) 6.25倍と有意に予後不良であった。
  • AKI発症に関連する因子としてアミノ酸インバランス、アルコール関連肝疾患、代謝異常関連脂肪性肝疾患が関連することが示唆される。
  • 本研究により、肝硬変患者のAKIの予後に対する影響が明らかとなり、そのリスク因子を把握することで、将来のAKI発症の予防と健康寿命の伸長に寄与することが期待される。

詳しい研究内容について

肝硬変患者における急性腎障害発症は予後を悪化させる
   :アミノ酸インバランスの重要性

論文情報

  • 雑誌名:Journal of Gastroenterology
  • 論文名:Acute kidney injury development is associated with mortality in Japanese patients with cirrhosis: impact of amino acid imbalance
  • 著 者:Miwa T 1, Utakata Y 2, Hanai T 1, Aiba M 2, Unome S 1, Imai K 1, Takai K 1, Shiraki M 2, Katsumura N 2, Shimizu M 1.
      1 岐阜大学大学院医学系研究科内科学講座消化器内科学分野
      2 中濃厚生病院消化器内科
  • DOI: 10.1007/s00535-024-02126-7

用語解説

  • 1) 急性腎障害(acute kidney injury; AKI):
    急性腎障害は数時間から数日の経過で急激に腎機能が低下する状態である。本研究では国際診断基準により過去3か月間に得られた血清クレアチニン値あるいは入院時のクレアチニン値を基準値とし、クレアチニン値が48時間以内に0.3 mg/dl以上増加、または基準値から50%以上増加し、その増加が7日以内に発生した場合、AKIと診断した。
  • 2) アミノ酸インバランス:
    肝硬変患者は血中のアミノ酸濃度が変化し、ロイシン、イソロイシン、バリンなどの分岐鎖アミノ酸が減少し、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンなどの芳香族アミノ酸が増加することがアミノ酸インバランスとして知られている。BTRは、アミノ酸インバランスを評価するための簡便なバイオマーカーであり、アミノ酸インバランスは、肝性脳症、肝細胞癌、サルコペニアなど、肝硬変の合併症に関連することが知られている。
  • 3) アルコール関連肝疾患:
    アルコール性肝疾患は、酒の常用飲用によって引き起こされる一連の肝疾患のことであり、アルコール性脂肪肝に始まり、肝細胞の破壊が進行するとアルコール性肝硬変に至る。
  • 4) 代謝異常関連脂肪性肝疾患:
    代謝異常関連脂肪性肝疾患は肥満、糖尿病、その他の内分泌代謝障害に関連した脂肪性肝疾患であり、慢性的な脂肪肝炎が起こることにより肝硬変へと病態が進展する。
  • 5) ハザード比:
    ハザード比は生存分析では、説明変数によって記述された条件に対応するハザード率の比である。たとえば、医薬品Aを用いた群の単位時間当たりの死亡率が医薬品Bを用いた群の死亡率の2倍である場合、ハザード比は2となる。

2024.07.04

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