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糖鎖伸長のブレーキ役を発見 ~糖鎖伸長の制御による血中タンパク質の寿命の調節~

 岐阜大学糖鎖生命コア研究所の木塚 康彦教授らの研究グループは、リール大学(フランス)、大阪大学、広島大学との共同研究で、タンパク質に付いた糖鎖 1)が伸びなくなる新たな仕組みを発見しました。
 タンパク質に付く糖鎖は、細胞の中で多くの糖鎖合成酵素により作られます。B4GALNT3 2)はそれら酵素の一つで、この酵素が作用すると、糖が1つ付加されますが、その後に糖鎖を伸ばす他の酵素が働かず、糖鎖が伸びなくなることがわかりました。通常、糖鎖が伸びて末端にシアル酸という糖が付くと、糖鎖を持つタンパク質(糖タンパク質)は血液中で安定となります。一方で、糖鎖からシアル酸が外れると血液中から除かれることがわかっています。B4GALNT3が作用すると、糖鎖が伸びずにシアル酸が付かなくなったことから、この酵素は糖タンパク質の血液からの除去を早めると考えられます。実際に、B4GALNT3は骨を少なくする糖タンパク質の血中の量を減らすことで、骨の形成を調節することが知られています。これらのことから、B4GALNT3は糖鎖の伸長を止めることで、血中タンパク質の量を少なくすると考えられます。本研究は、複雑な糖鎖形成の仕組みの解明と、タンパク質の血中安定性を制御する技術開発への貢献が期待されます。
 本研究成果は、2024年6月4日付で『Journal of Biological Chemistry』に掲載されました。

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概要図

発表のポイント

  • 糖鎖を作る酵素の一つであるB4GALNT3がタンパク質上の糖鎖に糖を1つ付けると、それ以上糖鎖が伸長しにくくなる
  • B4GALNT3がないマウスでは、糖鎖をもつタンパク質の血液中の濃度が高くなり、骨の形成が異常になることが知られている
  • B4GALNT3は糖鎖を短くすることで、血液中でのタンパク質の寿命を短く調節していると考えられる
  • 骨の形成機構の解明や、血中タンパク質の寿命の改変への応用が期待される

詳しい研究内容について

糖鎖伸長のブレーキ役を発見
   ~糖鎖伸長の制御による血中タンパク質の寿命の調節~

本研究は、文部科学省の大規模学術フロンティア促進事業「ヒューマングライコームプロジェクト」により支援を受けました。

論文情報

用語解説

  • 1) 糖鎖:
    グルコース(ブドウ糖)などの糖が鎖状につながった物質。遊離の状態で存在するものもあれば、タンパク質や脂質に結合した状態のものもある。デンプン、グリコーゲンなどの多糖は数多くの糖がつながり、糖鎖だけで遊離の状態で存在する。一方タンパク質に結合したものは、数個から20個程度の糖がつながったものが多い。糖鎖が結合したタンパク質を糖タンパク質と呼ぶ。
  • 2) B4GALNT3:
    糖鎖を合成する酵素(糖転移酵素)の一つで、細胞の中に存在し、LDN 3)という糖鎖構造を作る。
  • 3) LDN (LacdiNAc):
    糖鎖の中の部分的な構造の一つ。GalNAcと呼ばれる糖が、β1-4結合でGlcNAcと呼ばれる糖に結合した二つの糖から成る構造。

2024.06.05

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