マタタビはハチを欺く? 雌花は栄養価の低い偽花粉で資源を節約していた
岐阜大学教育学部の三宅 崇 教授、岐阜大学教育学部の高田 蘭子 学部生(当時)、新潟大学農学部の中山 晴夏 学部生(当時)、新潟大学農学部の崎尾 均 教授(現名誉教授)らの研究グループは、マタタビが送粉者であるハチを欺く戦略をとり、栄養資源を節約していることを明らかにしました。
雌雄異株植物のマタタビは、雄花だけでなく雌花にも雄しべがあり、生殖能力を持たない花粉を作ります。この偽の雄しべはハチを誘引する上で重要ですが、植物が花粉につぎ込む養分を減らして安上がりにしているのかどうかは不明でした。
研究グループは、植物にとって貴重な資源である窒素の量に着目し、雄花と雌花の雄しべや花粉で比較したところ、雌花の方が雄しべや花粉の窒素の量が少ないことが明らかになりました。さらに雌花の花粉は体積あたりの重量が低く、"かさ増し"されていることがわかりました。
一般に植物と送粉者の関係は、お互いに得をする相利共生の関係と考えられていますが、実際には常にそれぞれが自身の利益を最大化するように振る舞っています。本研究結果は、このような植物と送粉者の間にみられる進化的な駆け引きを理解する上で重要な知見といえます。
本研究成果は、日本時間2024年5月29日にPlant Species Biology誌のオンライン版で発表されました。
発表のポイント
- マタタビの雌花は生殖能力のない花粉をつけてハチを誘引するが、その花粉生産に雄花と同様の栄養コストを払っているのかは不明だった。
- 花粉の窒素含有量を雄花と雌花で比較したところ、雌花の方が窒素の量が顕著に少なかった。
- 雌花の花粉は体積あたりの重量が低く、"かさ増し"されていることがあきらかになった。
- これらから、マタタビの雌花は花粉生産の上で資源を節約して、雄花より栄養価の低い花粉を報酬とすることでハチを欺いていると考えられる。
- 植物と送粉者は互いに得をする相利共生の関係とされているが、このような資源の節約による欺きは、両者の駆け引きを理解する上で重要な知見といえる。
詳しい研究内容について
マタタビはハチを欺く?
雌花は栄養価の低い偽花粉で資源を節約していた
本研究は、日本学術振興会科研費(15K07217, 22K06389)、分子・物質合成プラットフォーム【文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム】(JPMXP09S20NU0016) 、および公益財団法人小川科学技術財団の支援を受けました。
論文情報
- 雑誌名:Plant Species Biology
- 論文名:Floral deception in dioecious Actinidia polygama (Actinidiaceae) revealed by differential nitrogen investment in male organs
- 著 者:Haruka Nakayama1, Ranko Takada1, Takashi Miyake2, Keiko Miyake, Takashi Nirei, Hitoshi Sakio(1筆頭著者、2責任著者)
- DOI: 10.1111/1442-1984.12470