肝硬変患者における転倒および転倒に伴う骨折の実態と 「一分間に回答できる動物の名前の数」の関係について調査
肝硬変患者はサルコペニア、フレイル、肝性脳症などにより転倒リスクが高いことが知られています。したがって肝硬変患者の転倒および転倒による骨折を予測し、未然に防ぐための方策が必要です。しかし、肝硬変患者の神経機能と転倒および転倒に伴う骨折の関連については調査が不十分でした。岐阜大学大学院医学系研究科消化器内科学分野 清水雅仁教授、三輪貴生医師らのグループは、肝硬変患者における転倒および転倒に伴う骨折の実態とANTで評価した神経機能との関連を明らかにしました。
三輪貴生医師らの研究により年齢中央値72歳の肝硬変患者の19%が過去一年間に転倒しており、5%が転倒により骨折していることが明らかになりました。また転倒や骨折はANTで評価した神経機能と関連があることが示唆されました。本研究成果から、ANTを用いて肝硬変患者の転倒および骨折のリスクを把握することで、将来の転倒および骨折の予防と健康寿命の伸長に寄与することが期待されます。
本研究成果は、日本時間2024年2月21日にScientific Reports誌で発表されました。
発表のポイント
- アニマルネーミングテスト(Animal naming test;ANT)1)は「一分間に動物の名前をいくつ回答できるか」とういうシンプルな神経機能検査である。
- 本研究では、94名の肝硬変患者を対象として、ANTと過去一年間の転倒および転倒による骨折の関係について調査した。
- 対象患者のうち19%転倒、5%が転倒に伴う骨折を経験し、特にANTが11以下の患者ではANTが11よりも高い患者と比較して有意に転倒および骨折が多いことが示された。
- 本研究により、ANTを用いて肝硬変患者の転倒および骨折リスクを把握することで、将来の転倒および骨折の予防と健康寿命の伸長に寄与することが期待される。
詳しい研究内容について
肝硬変患者における転倒および転倒に伴う骨折の実態と
「一分間に回答できる動物の名前の数」の関係について調査
論文情報
- 雑誌名:Scientific Reports
- 論文名:Animal naming test stratifies the risk of falls and fall-related fractures in patients with cirrhosis
- 著 者:Miwa T1, Hanai T1,2, Hirata S2, Nishimura K2, Unome S1, Nakahata Y1,3, Imai K1, Shirakami Y1, Suetsugu A1, Takai K1,4, Shimizu M1.
- 所属:
1 岐阜大学大学院医学系研究科内科学講座消化器内科学分野
2 岐阜大学医学部附属病院生体支援センター
3 朝日大学病院消化器内科
4 岐阜大学大学院医学系研究科地域腫瘍学講座 - DOI:
10.1038/s41598-024-54951-8
用語解説
- 1) アニマルネーミングテスト:
アニマルネーミングテストは「1分間に回答できる動物の数」を調査する簡易な神経機能検査である。施行時間が短いことと特殊な検査機器が不要であることから欧州肝臓学会では肝性脳症の検査法としてアニマルネーミングテストを推奨している。