研究・採択情報

肝がん予防の患者層別化マーカーを開発 -血中MYCNは肝がん予防薬非環式レチノイドの治療効果を予測-

 大学院医学研究科消化器内科学の清水雅仁教授、白上洋平講師、理化学研究所(理研)生命医科学研究センター細胞機能変換技術研究チームの秦咸陽研究員、鈴木治和チームリーダー、東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座の越智小枝教授、古谷裕講師らの国際共同研究グループは、血中MYCN[1]は世界初の肝がん(肝臓がん)再発予防薬として期待される「非環式レチノイド[2](一般名:ペレチノイン)」の治療応答性を予測する患者層別化バイオマーカーであることを発見しました。
 本研究成果は、肝がん治療後の再発を予防する補助療法の開発において、個別化医療に向けた非環式レチノイドの早期臨床応用に貢献すると期待できます。
 本研究は、科学雑誌『International Journal of Cancer』オンライン版(2月21日付:日本時間2月21日)に掲載されました。

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研究概要図

用語解説

  • [1] MYCN
    MYCN(ミックエヌ)遺伝子は、特定のDNA配列に結合して標的遺伝子の発現を制御する転写因子MYCファミリーの一つをコードする。神経芽腫の発生に関わるなど、がん遺伝子として知られる。この遺伝子の発現によりMYCNタンパク質が合成される。
  • [2] 非環式レチノイド
    一般名:ペレチノイン、英語名:acyclic retinoid(略称:ACR)。世界初の肝がん再発化学予防候補薬(開発コード名はNIK-333)として第Ⅲ相臨床試験を実施してきたが、承認までには至っていない。肝がん幹細胞に対する特異的分子標的の解明は重要な課題になっている。

詳しい研究内容について

肝がん予防の患者層別化マーカーを開発
 -血中MYCNは肝がん予防薬非環式レチノイドの治療効果を予測-

論文情報

  • 雑誌名:International Journal of Cancer
  • 論文名:Serum MYCN as a predictive biomarker of prognosis and therapeutic response in the prevention of hepatocellular carcinoma recurrence
  • 著 者:Qin XY, Shirakami Y, Honda M, Yeh SH, Numata K, Lai YY, Li CL, Wei F, Xu Y, Imai K, Takai K, Chuma M, Komatsu N, Furutani Y, Gailhouste L, Aikata H, Chayama K, Enomoto M, Tateishi R, Kawaguchi K, Yamashita T, Kaneko S, Nagaoka K, Tanaka M, Sasaki Y, Tanaka Y, Baba H, Miura K, Ochi S, Masaki T, Kojima S, Matsuura T, Shimizu M, Chen PJ, Moriwaki H, Suzuki H
  • DOI:10.1002/ijc.34893