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ヤギのプロゲステロン錠剤誘発過排卵における卵巣動態の磁気共鳴イメージングによる評価

 岐阜大学高等研究院One Medicineトランスレーショナルリサーチセンター(COMIT)・共同獣医学研究科(以下「岐阜大学」)高須准教授らの研究グループと株式会社セツロテック(本社:徳島県徳島市、代表取締役:竹澤慎一郎、以下「セツロテック」)の貝沼研究員、稲谷研究員(当時)は、従来法である膣内留置プロゲステロン徐放装置(CIDR)1)を用いずにプロゲステロン錠剤2)を用いることでヤギの過排卵処置ができること、磁気共鳴イメージング(MRI)3)により卵巣動態の観察が可能であることを実験で実証しました。
 ゲノム編集ヤギは、医薬品・繊維など有用物質生産を行うバイオリアクターや分子メカニズムを解明するモデル動物としての利用が望まれています。しかしながら、これまでにゲノム編集ヤギ作出に必要な小型家畜に対する高度な生殖技術の実践は制限されていました。
 本成果によって、ヤギの生殖工学の向上に寄与し、ゲノム編集ヤギ作出への新たな展望を開くことで、多岐にわたる社会的利益をもたらすことが期待されます。
 本研究成果は、令和6年1月17日にAnimal Science Journalに掲載されました。

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用語解説

  • ※1 膣内留置プロゲステロン徐放装置
    発情をコントロールする薬剤で天然型プロゲステロンを含有する膣内留置型の徐放性プロゲステロン製剤です。主にウシで用いられておりInterAg社のEAZI-BREED CIDR(Hamilton, New Zealand)やプリッドテイゾーがあります。CIDRは膣内挿入も簡単で、安定的であり、国内では発情同期化製剤および鈍性発情と卵巣静止の治療薬として認可されています。しかしながら、日本ではヒツジ・ヤギに用いる膣内留置プロゲステロン徐放装置がなく衛生上の懸念から輸入も制限されています。
  • ※2 プロゲステロン錠剤
    ヒトの婦人科領域で日常的に使用されており、ヒト血漿中のプロゲステロン濃度を上昇させます。プロゲステロン錠剤は、生殖補助医療における黄体補充のために使用されます。経腟投与可能な錠剤のため、経口投与でみられる肝臓代謝によるプロゲステロン活性の低下、注射投与でみられる通院の必要性を回避することが可能です。
  • ※3 磁気共鳴イメージング(MRI)
    強い磁石と電波によって、身体の内部情報を画像化する検査方法です。CT検査とは異なり、放射線を使わないため、被ばくの心配がありません。脳、がん、神経・筋・靭帯など検査に用いられます。

詳しい研究内容について

ヤギのプロゲステロン錠剤誘発過排卵における卵巣動態の磁気共鳴イメージングによる評価

論文情報

  • 雑誌名:Animal Science Journal (2024) 95(1):e13914
  • 論文名:Ovarian dynamics in progesterone tablet-induced superovulation in goats assessed by magnetic resonance imaging
  • 著 者:Kazuki Hano, Satoshi Takashima, Yuka Inatani, Risa Kainuma, Yuki Oiji, Kotono Nakamura, Masato Yayota, Masaki Takasu
  • DOI:10.1111/asj.13914

2024.02.27

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