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Beyond 5G/6Gの実現に向けて障害物による電波の遮蔽に強いテラヘルツ無線伝送を自己修復ビームにより実証

 岐阜大学工学部 久武 信太郎教授、ソフトバンク株式会社、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICTエヌアイシーティー)、名古屋工業大学大学院工学研究科の研究グループは、Beyond 5G/6G※1時代を見据え、障害物による電波の遮蔽に強い300GHz帯※2テラヘルツ無線伝送(以下「テラヘルツ無線※3」)を自己修復ビーム※4により実証しました。
 このたび本研究グループは、300GHz帯においてベッセルビーム※5を生成し、ベッセルビーム断面内に設置された障害物により乱されたビーム形状が、伝搬とともに自己修復することと、通常のガウスビームと比べて障害物による通信エラーの発生が少なくなることを実験的に確認しました。自己修復ビームにより、障害物による電波の遮蔽に強いテラヘルツ無線通信路が形成可能であることを示した本研究成果は、これまでテラヘルツ無線の大きな弱点であるとされてきた、障害物によるビーム遮蔽に脆弱であるという問題を解決し、Beyond 5G/6G時代の超高速無線通信の実用化への重要な一歩と位置付けられます。
 本研究成果は、2023年12月18日(現地時間)にApplied Physics Letters誌のオンライン版で発表されました。

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発表のポイント

  • 障害物による電波の遮蔽に強いテラヘルツ無線伝送を自己修復ビームにより世界で初めて実証
  • 障害物がビーム中心を横切っても切れにくいテラヘルツ無線通信の実現に期待
  • Beyond 5G/6G時代の超高速無線通信の実用化への重要な一歩

用語解説

  • ※1 Beyond 5G/6G:第5世代移動通信システム(5G)の次の世代以降の無線アクセスシステムを指し、5Gの特長(超高速、超低遅延、多数同時接続)のさらなる高度化に加えて、高信頼化や超低消費電力化など新たな技術革新が期待される。
  • ※2 300GHz帯:200GHz~300GHzは大気の窓と呼ばれる吸収が低い周波数領域であり、中距離(~1km程度)で利用可能な帯域として期待されている。
  • ※3 テラヘルツ無線:100GHz~3THzの周波数領域を用いた無線通信技術であり、特に100GHz~300GHzがBeyond 5G/6Gでの利用が期待されている。
  • ※4 自己修復ビーム:通常の電磁ビームが障害物によって一部分遮蔽されると、ビーム断面内の強度分布は乱され、元のビーム分布と異なったものとなる。一方、自己修復ビームは、障害物によって乱された強度分布が伝搬とともに修復され、元のビーム強度分布に近い分布にまで戻る性質を持つ。
  • ※5 ベッセルビーム:ビーム断面内の振幅分布がベッセル関数に従うビーム。自己修復特性がある。

詳しい研究内容について

Beyond 5G/6Gの実現に向けて障害物による電波の遮蔽に強いテラヘルツ無線伝送を自己修復ビームにより実証

論文情報

  • 雑誌名:Applied Physics Letters
  • 論文名:Obstacle-tolerant terahertz wireless link using self-healing Bessel beams
  • 著 者:Yu Katsuue,1 Ayumu Yabuki,2 Isao Morohashi,3 Atsushi Kanno,4 Norihiko Sekine,3 Junichi Nakajima,2 and Shintaro Hisatake1
    1) Gifu University, Gifu, Japan
    2) SoftBank Corp., Tokyo, Japan
    3) National Institute of Information and Communications Technology, Koganei, Japan
    4) Nagoya Institute of Technology, Nagoya, Japan
  • DOI:10.1063/5.0171317

2023.12.21

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