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血管肉腫の創薬研究におけるイヌ腫瘍モデルの有用性を評価する総説論文を発表

 血管肉腫は、5年生存率9%程度と極めて予後が悪い悪性腫瘍ですが、患者数が非常に少なく(日本で年間50人程度、人口の0.00004%)、治療薬の開発研究が進んでいません。
 血管肉腫はヒトだけではなく、イヌにも発生します。イヌ血管肉腫はヒト血管肉腫とよく似た臨床動態と病理学的性質を持つ一方で、特定の犬種に極めて高い確率で発生します。そのため、イヌ血管肉腫はヒト血管肉腫の疾病モデルとして新たな治療薬開発研究への応用が期待されています。一方で、イヌ血管肉腫は現時点では創薬開発モデルとして確立されておらず、薬剤開発への応用を推進するためには包括的な観点からのモデルの評価と議論が必要でした。
 この度、マンスフィールド財団・米国研究製薬工業協会(PhRMA)指定スカラーを中心とした岐阜大学高等研究院 平島一輝 G-YLC特任助教、慶應義塾大学病院/臨床研究推進センター 明田直彦 特任助教(医師、医薬品承認審査経験者)、国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科 河知あすか 医師(希少がん担当臨床医)の研究グループは、IDEXXラボラトリーズ 平島瑞希 獣医師(米国獣医病理学専門医 解剖病理)と協働し、基礎研究・臨床・薬事規制・病理学の観点からイヌ血管肉腫の有用性を評価し、総説論文として公開しました。論文は、日本時間2023年12月7日14時00分にFrontiers in Oncology誌(Impact Factor 6.24)のオンライン版で発表されました。本成果により、イヌ腫瘍モデルを用いた創薬研究推進の議論がさらに活性化し、新たな治療薬開発研究への応用が期待されます。

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発表のポイント

  • ヒトの血管肉腫は極めて予後が悪い悪性腫瘍ですが、患者数が非常に少なく、治療薬の開発(創薬研究)が進んでいません。
  • イヌの血管肉腫はヒトと異なり高頻度に発生するうえ、ヒトと似た臨床動態と病理学的性質を示すため(次項図1)、ヒト血管肉腫の疾病モデルとして有用と考えられてきました。しかし、現時点ではイヌ血管肉腫は創薬モデルとして確立されておらず、治療薬開発への応用は実現していません。
  • 今回、イヌ血管肉腫を疾病モデルとして創薬に応用するために必要な要件を、基礎研究、臨床、薬事規制、獣医病理学の専門家を交えて包括的な観点から検討し、その成果を論文として公開しました。

詳しい研究内容について

血管肉腫の創薬研究におけるイヌ腫瘍モデルの有用性を評価する総説論文を発表

論文情報

  • 雑誌名:Frontiers in Oncology
  • 論文名:Hemangiosarcoma in dogs as a potential non-rodent animal model for drug discovery research of angiosarcoma in humans
  • 著 者:Kazuki Heishima, Naohiko Aketa, Mizuki Heishima, Asuka Kawachi
  • DOI: https://doi.org/10.3389/fonc.2023.1250766

2023.12.13

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