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傷ついたDNAの修復機能において重要な「ポリ(ADP-リボース)」の部分構造の高効率な合成法の開発に成功 ~癌治療の一助へ~

 岐阜大学糖鎖生命コア研究所の田中 秀則 助教、安藤 弘宗 教授らの研究グループは、ポリ(ADP-リボース)1)の部分構造の高効率な合成法の開発に成功しました。
 ポリ(ADP-リボース)は、タンパク質に結合して存在する生体高分子であり、DNAが傷ついた時の修復機能において重要な役割を担っています。また、ポリ(ADP-リボース)を合成する酵素および分解する酵素を阻害すると、特定の癌を細胞死誘導できるため、癌治療への応用が報告されています。しかし、この細胞死誘導でポリ(ADP-リボース)が分子レベルでどのように働いているかは未だ明らかになっていません。これは、ポリ(ADP-リボース)が生体内に極微量しか存在せず、研究試料を大量に供給ができないためです。本研究は、この課題を解決するためにポリ(ADP-リボース)の部分構造の高効率な合成法を開発しました。この成果は、ポリ(ADP-リボース)の大量供給の実現に向けた重要なステップになります。
 本研究成果は、2023年11月2日発刊の国際学術誌『European Journal of Organic Chemistry』のVery Important Paper(同雑誌掲載全論文の5%未満)として掲載されました。また、研究内容のイラストが同誌の表紙に採用されました。

1) ポリ(ADP-リボース):ADPリボースを単量体として、ADPリボース同士が1,2-cisグリコシド結合を介して繋がってできる鎖状の生体高分子。

miwa.png
複数ある合成法(ルート)から適切なものを選び、化合物(駒)が化学反応(升目)を経て、
目的生成物(ゴール)にたどり着くイメージを双六で表現したイラスト

本研究のポイント

  • ポリ(ADP-リボース)は、傷ついたDNAの修復機能において重要な生体高分子で癌にも関連しています。
  • ポリ(ADP-リボース)の部分構造の高効率な合成法の開発に成功しました。
  • これによりポリ(ADP-リボース)の大量供給が可能となるため、同化合物の詳細な役割の解明や癌治療の一助になると期待されます。

詳しい研究内容について

傷ついたDNAの修復機能において重要な「ポリ(ADP-リボース)」の部分構造の高効率な合成法の開発に成功
  ~癌治療の一助へ~

論文情報

  • 雑誌名:European Journal of Organic Chemistry
  • 論文名:Synthetic Approaches to Ribosyl Adenosine 5′,5″-Diphosphate Fragment of Poly(ADP-ribose)
  • 著 者:Rui Hagino, Keita Mozaki, Naoko Komura, Akihiro Imamura, Hideharu Ishida, Hiromune Ando, Hide-Nori Tanaka (下線は本学教職員)
  • DOI番号: 10.1002/ejoc.202300875 

2023.11.24

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