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太陽光誘起クロロフィル蛍光の観測で捉えた落葉樹林の林床の寄与 ~二酸化炭素吸収の鉛直分布を把握~

 国立大学法人東海国立大学機構岐阜大学流域圏科学研究センターの村岡裕由教授、国立環境研究所衛星観測センターの両角友喜特別研究員、北海道大学農学研究院の加藤知道准教授、宇宙航空研究開発機構らの研究グループは、落葉広葉樹林の二酸化炭素(CO2)吸収機能について指標となる太陽光誘起クロロフィル蛍光※1(SIF)の鉛直分布を世界で初めてリモートセンシング観測することによって明らかにしました。
 森林観測タワーの異なる地上高の3点(18m、14m、8m)においてSIF放出を詳細に解析し、2020年4月と11月に森林全体のSIF放出のうち林床の寄与が約半分を占めることを明らかにしました。同時に測定された群落CO2濃度・CO2交換量は、林床のSIFが樹木落葉期におけるCO2吸収に応答することを裏付けました。今回提案された手法は数値モデルの予測を実証でき、人工衛星のSIF観測による全球的な温室効果ガス監視網の発展に寄与し、今後さまざまな生態系への応用が期待されます。
 本研究の成果は、2022年11月16日付でElsevierから刊行される自然科学分野の学術誌『Remote Sensing of Environment』にオンライン掲載されました。

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図1 SIF鉛直分布の観測概要と森林の階層構造および視野内の植物の分布図。
   略号植物名...Qu:ミズナラ、Bt:ダケカンバ、Ss:クマイザサ、Ix:アオハダ、Ac:ヒトツバカエデ、Vb:ガマズミ。

詳しい研究内容について

太陽光誘起クロロフィル蛍光の観測で捉えた落葉樹林の林床の寄与
  ~二酸化炭素吸収の鉛直分布を把握~

論文情報

  • 雑誌名:Remote Sensing of Environment
  • 論文名:Contributions of the understory and midstory to total canopy solar-induced chlorophyll fluorescence in a ground-based study in conjunction with seasonal gross primary productivity in a cool-temperate deciduous broadleaf forest
  • 著 者:Tomoki Morozumi, Tomomichi Kato, Hideki Kobayashi, Yuma Sakai, Naohisa Nakashima, Kanokrat Buareal, Kenlo Nishida Nasahara, Tomoko Kawaguchi Akitsu, Shohei Murayama, Hibiki M. Noda, Hiroyuki Muraoka
  • DOI番号:10.1016/j.rse.2022.113340

用語解説

  • ※1) クロロフィル蛍光:
    植物の細胞内に含まれるクロロフィル色素(葉緑素)が光合成における光エネルギー受容・伝達において、反応に利用できない余剰エネルギーの一部を蛍光として放出したもの。赤色(red)から遠赤色(far-red)波長の光として放出される。ストレス診断など広く農業分野や生物学分野で利用される。

2022.12.07

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