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大阪府淀川水系における新たな国内外来生物・ミナミアカヒレタビラを初確認

 龍谷大学 生物多様性科学研究センターの伊藤 玄客員研究員(岐阜大学教育学部 招へい講師)らの研究グループは、2021年5月に大阪府淀川水系から採集されたタナゴ亜科魚類であるタビラ類①)5個体のミトコンドリアDNA(mtDNA)②)チトクロームb領域の塩基配列を解析し、ミナミアカヒレタビラ北陸系統であることを明らかにしました。これは、淀川水系からミナミアカヒレタビラを初めて記録したものであり、本亜種は近年人為的に移入された国内外来生物であると考えられます。
 現時点では、淀川水系におけるミナミアカヒレタビラの分布は局所的に確認されたものですが、今後、分布域の拡大に伴って、同水系に自然分布する別亜種であるシロヒレタビラへの遺伝的撹乱や産卵母貝を巡る競合、在来淡水魚類との餌を巡る競合などの悪影響が懸念されます。
 なお、本研究の成果は、伊藤 玄客員研究員を筆頭著者として、9月9日公開(発送日)の「地域自然史と保全」誌(関西自然保護機構)③)に掲載されました。

20220826.png 2021年5月に採集された生体をホルマリン固定直後に撮影。標本は、滋賀県立琵琶湖博物館に登録保管(LBM1210059149)。

発表のポイント

  • 2021年5月に大阪府淀川水系で採集されたタビラ類5個体のミトコンドリアDNA(mtDNA)を解析し、ミナミアカヒレタビラ北陸系統であることを確認
  • タビラ類は飼育や釣りの対象としての人気が高いこともあり、近年、意図的な人為的移入の可能性がある非自然分布域からの確認が相次ぐ
  • 現時点では、淀川水系におけるミナミアカヒレタビラの分布は局所的だと考えられるが、分布域拡大のモニタリングや在来種の保全策について検討が必要

詳しい研究内容について

大阪府淀川水系における新たな国内外来生物・ミナミアカヒレタビラを初確認

論文情報

  • 雑誌名:「地域自然史と保全」誌(関西自然保護機構)
  • 論文名:大阪府淀川水系における国内外来ミナミアカヒレタビラの初確認と移入起源
  • 著者名:伊藤 玄1,2,3 , 小山 直人4 , 川瀬 成吾5 , 古屋 康則2
  • 所 属:
    1龍谷大学生物多様性科学研究センター,2岐阜大学教育学部,3NPO法人流域環境保全ネットワーク,4NPO法人ニッポンバラタナゴ高安研究会,5滋賀県立琵琶湖博物館

用語解説

  • ①)タビラ類:
    コイ科タナゴ亜科魚類の1種。タビラ類は、シロヒレタビラ、セボシタビラ、アカヒレタビラ、キタノアカヒレタビラ、ミナミアカヒレタビラの5亜種に分類されています。雄の臀鰭外縁の婚姻色(繁殖期に現れる平常時とは異なった体色や斑紋)が美しいことから飼育や釣りの対象として人気が高く、近年人為的な移入と見られる確認例が相次いでいます。5亜種の形態は大きく重複していますが、各亜種はミトコンドリアDNA(mtDNA)を用いた系統解析により明瞭に区別することができます。
  • ②)ミトコンドリアDNA(mtDNA):
    細胞内小器官のひとつであるミトコンドリア内に存在するDNAのこと。ミトコンドリアはエネルギー生産や呼吸代謝の役目を持つ特殊な器官で、動植物や菌類などほとんどすべての生物の細胞に見られます。ミトコンドリアDNAは、核DNAに比べて塩基置換の起こる速度が速いこと、母性遺伝であること、ミトコンドリアDNAの数が多いといった特徴があることから、生物の進化を研究する上で有効なツールとなっています。
  • ③)関西自然保護機構:
    関西自然保護機構(KONC)は自然環境保護にかかわる人たちや関心をもった人たちを幅広く組織して、自然環境保全に関する各分野での研究を結集し、その研究の進歩と自然環境の保護・保全のために努力することをめざして、1978年に創立されました。
    KONCはその活動の成果と、会員個々の学識と経験の蓄積にもとづいて、近畿地方に於ける広い意味での自然保護の諸問題に対する有力なアドバイザリー・ボディ(助言勧告機関)として、社会の要請にこたえることを企図しています。

2022.09.09

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