研究成果・採択情報

八ヶ岳大月川岩屑流発生の 14C年代測定 南海トラフ地震と糸魚川ー静岡構造線の連動の可能性

 岐阜大学教育学部の勝田長貴准教授、岐阜聖徳学園大学教育学部の川上紳一教授(岐阜大学教育学部名誉教授)らは、長野県東部に位置する八ヶ岳1)火山北部の崩壊で発生した大月川岩屑流堆積物2)中の埋没樹木の放射性炭素(14C)年代測定を行い、この出来事は西暦887年に起こった可能性が高いことを明らかにしました。この出来事は、古文書に記載があり、八ヶ岳の崩壊を記録した可能性が示唆されていましたが、それを支持する年代学的データは多くありません。本研究で、埋没樹木の14C年代値が古文書の記録とほぼ一致したことから、西暦887年の南海トラフ3)で発生したプレート沈み込み地震にともなって八ヶ岳で山体崩壊が起こったが、八ヶ岳はプレート沈み込み地震の震源域と離れていることから、八ヶ岳の近くを走る糸魚川-静岡構造線4)の南部も同時に活動した可能性を考察しました。
 本研究成果は、日本時間令和3年5月18日(火)に国際第四紀学連合(INQUA)の国際誌Quaternary International誌のオンライン版で発表されました。

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八ヶ岳・大月川岩屑堆積物中の埋没樹木14C年代測定値、14C曲線のマッチング。黒丸が今回の分析値。図中の曲線が14C標準曲線。星印が西暦887年の仁和地震。(クリックすると拡大します)

発表のポイント

  • 古文書の記録にある「信濃国山禿川溢れる」という出来事は、八ヶ岳の崩壊による大月川岩屑流で、千曲川に堰止湖ができ、自然堤防が決壊して下流に被害が及んだ出来事を記録したものである。
  • 大月川岩屑流堆積物には、多数の樹木が埋没しており、樹齢400年の大木の中心から表面まで、複数個所で木片資料を採取し、14C年代測定を行った。
  • 年輪数と14C年代値の関係図を、14C標準曲線と重ね合わせることで、樹木が埋没した年代値が約西暦838±17年という結果になった。
  • 14C年代測定値は、海外の測定結果と国内の測定結果で、とりわけ1200年前ごろの値にずれがあり、国内の測定値は、実際の年代値よりも30年古い値になることが近年明らかになった。
  • 今回、得られた西暦838±17年という年代値は実際より30年古いとして補正をほどこすと、西暦850-890年となり、古文書の記録と一致した。
  • 八ヶ岳の崩壊の原因としては、八ヶ岳火山の活動、南海トラフ地震に誘発されたという説があったが、これまでの地質調査で、八ヶ岳に有史時代に活動があったという記録はない。南海トラフ地震の震源域と八ヶ岳は距離が離れていることから、プレート沈み込み地震で山体崩壊する可能性は低いため、糸魚川-静岡構造線にそった活断層が連動した可能性を示唆した。
  • 1) 八ヶ岳
    長野県東部に位置する火山列。北の蓼科山から南の編笠山まで約20の峰がある。活火山とされているが、歴史時代に活動した記録はない。
  • 2) 大月川岩屑流堆積物
    八ヶ岳北部から東を流れる千曲川にいたる大月川にそって分布する岩屑流堆積物。数多くの樹木が埋没している。松原湖は大月川岩屑流堆積物にできた湖。大月川岩屑流堆積物によって、千曲川がせき止められ、それが決壊して被害が長野市あたりまで及んだことが郷土史研究で明らかにされている。
  • 3) 南海トラフ
    静岡県の駿河湾から西南日本の太平洋沖を走る海底谷で、フィリピン海プレートが沈み込んでいる場所にできた低地。プレート沈み込みにともなう大規模地震が繰り返し発生している。1944年1946年に地震が発生し、南海トラフの最東部の駿河湾はこのとき活動しなかったことから、東海地震が発生するとして地震予知観測体制が整備された。
  • 4) 糸魚川-静岡構造線
    新潟県糸魚川市から静岡県の安部川付近に至る地質境界線で、ここを境に日本列島は西南日本と東北日本に区分される。フォッサマグナと呼ばれる地質構造帯の西縁に位置している。糸魚川-静岡構造線に沿って活断層も走っており、近い将来大規模地震を発生させる可能性のある活断層も含まれる。

詳しい研究内容について

八ヶ岳大月川岩屑流発生の14C年代測定
 南海トラフ地震と糸魚川-静岡構造線の連動の可能性

論文情報

  • 雑誌名:Quaternary International
  • 論文名:
    Radiocarbon analysis of tree ring for a catastrophic collapse in the northern Yatsugatake volcanoes: Its implication for seismotectonics in southwest Japan
  • 著 者:
    Nagayoshi Katsuta, Yosuke Okuda, Toshio Nakamura, Hirotaka Oda, Akiko Ikeda, Sayuri Naito, Masako Kagawa, Shin-ichi Kawakami
  • DOI番号:https://doi.org/10.1016/j.quaint.2021.05.007
  • 論文公開URL:
    https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1040618221002925

2021.05.26

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