研究成果・採択情報

本田諒 助教ら連合創薬医療情報研究科のグループの研究成果が「Cell Chemical Biology」に掲載  ―RAS阻害剤の開発に成功 革新的抗がん剤への発展が期待―

 岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科 本田諒 助教、赤尾幸博 特任教授、上田浩 教授らの研究グループは、RASタンパク質1)を阻害する新規薬剤の開発に成功しました。RASタンパク質は約30%のがんで活性型に変異していますが、これまでの技術ではRAS阻害剤を設計することが困難でした。本研究グループは細胞膜透過性タンパク質2)というユニークな分子を多数合成し、この中からRAS阻害剤を見出すことに成功しました。本剤は革新的な抗がん剤に発展することが期待されます。
 本研究成果は、2021年5月8日(土)にCell Chemical Biology誌のオンライン版で発表されました。

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開発したRAS阻害剤の構造と阻害メカニズム
本剤はRAS結合ドメイン(RBD)3)と細胞膜透過性ペプチド(CPP)4)が融合した人工タンパク質です。本剤は分子量が大きいにも関わらず細胞膜を通過することができるため、細胞の中に侵入しRASと強く結合することができます。これによってRASの機能を阻害し、がんを抑制することができます。

発表のポイント

  • RASタンパク質は約30%のがんで活性型に変異しているため、RAS阻害剤の開発は多数のがんを抑制する革新的な抗がん剤に発展することが期待されています。
  • しかし、RASタンパク質は従来の技術では阻害剤を設計することが難しい性質をしているため、これまで有効なRAS阻害剤は開発されませんでした。
  • 本研究では、今まで注目されていなかった「細胞膜透過性タンパク質」という分子を多数合成することで、新規RAS阻害剤を開発することに成功しました。
  • 本剤を基本骨格にしてさまざまな改良を加えることで、将来的に革新的な抗がん剤に発展することが期待できます。
  • 1) RASタンパク質
    もともとは細胞の増殖などの機能に関与しているタンパク質です。しかし、がんの約30%では活性型に変異しており、これががんの増殖や転移などの主原因になっています。RASの変異にはG12C、G12V、G12D、Q61Rなどさまざまなタイプがあります。
  • 2) 細胞膜透過性タンパク質
    ふつうのタンパク質は分子量が大きすぎるため、細胞膜を通過して細胞の中に入ることができません。しかし、特殊なペプチドやリポソームなどでタンパク質を修飾すると細胞の中に入る場合があります。このような特殊なタンパク質を細胞膜透過性タンパク質と呼びます。
  • 3) RAS結合ドメイン
    RASのシグナル伝達に関与する「RASエフェクタータンパク質」がもつドメインです。分子量10,000Da程の大きな分子で、先行研究でRASに強く結合することが示されています。数十種類のRAS結合ドメインが知られています。
  • 4) 細胞膜透過性ペプチド
    大きな分子の細胞膜透過性を高めるペプチドです。数10個程度のアミノ酸から成ります。数百種類の異なるアミノ酸配列の細胞膜透過性ペプチドが知られています。

詳しい研究内容について

本田諒 助教ら連合創薬医療情報研究科のグループの研究成果が「Cell Chemical Biology」に掲載
 ―RAS阻害剤の開発に成功 革新的抗がん剤への発展が期待―

論文情報

  • 雑誌名:Cell Chemical Biology
  • 論文名:Specific inhibition of oncogenic RAS using cell-permeable RAS-binding domains
    (細胞膜透過性をもつRAS結合ドメインにより変異型RASを特異的に阻害する)
  • 著 者:Teiko Komori Nomura, Kazuki Heishima, Nobuhiko Sugito, Ryota Sugawara, Hiroshi Ueda, Akao Yukihiro, and Ryo Honda
    (野村禎子、平島一輝、杉戸信彦、菅原涼太、上田浩、赤尾幸博、本田諒、すべて連合創薬所属)
  • DOI番号:https://doi.org/10.1016/j.chembiol.2021.04.013
  • 論文公開URL:https://www.cell.com/cell-chemical-biology/fulltext/S2451-9456(21)00206-3

2021.05.11

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