研究成果

膵臓ベータ細胞の増殖プロセスを時系列解析 ―糖尿病の新規治療開発に期待―

 京都大学大学院医学研究科 龍岡久登 特定助教,坂本智子 同研究員,渡辺亮 同特定准教授,稲垣暢也 同教授,岐阜大学大学院医学系研究科 矢部大介 教授らの研究グループは,膵臓のベータ細胞*1 が増殖するプロセスを一細胞レベルで解析することに世界ではじめて成功しました。
 糖尿病状態ではインスリンを産生する膵臓ベータ細胞の量が少なくなることから,その再生を誘導する治療法の確立が期待されています。一方で,ベータ細胞以外にも複数の内分泌細胞がある膵臓では,ベータ細胞だけに注目して解析することが困難でした。本研究では,ベータ細胞の増殖が促されるモデルマウスの膵臓について,一細胞レベルで遺伝子発現*2 を観察するシングルセルRNAシークエンスを行い,ベータ細胞の増殖過程の詳細を解析しました。
 本研究成果は,2020年12月18日(金)に国際学術誌「iScience」に掲載されました。

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本研究成果のポイント

  • 肝臓の半分を切除することで、ベータ細胞の増殖を強力に誘導したマウスモデルを用意し,ベータ細胞を含む膵島内の細胞に対して,1細胞レベルで遺伝子発現を解析できるシングルセルRNAシークエンスを実施しました。
  • 遺伝子発現プロファイルおよびベータ細胞のマーカー遺伝子であるIns1の発現パターンから,ベータ細胞,およびアルファやデルタ細胞などの内分泌細胞への分類が可能であることが示されました。
  • 遺伝子発現プロファイルから細胞状態の遷移を解析する擬似時系列解析*3 によって,ベータ細胞における増殖停止期から増殖期への遷移に関与する遺伝子群を捉えました。
  • *1 ベータ細胞: 膵臓内の膵島という組織内に存在し,インスリンを産生する細胞。その機能の障害や量の低下が糖尿病の発症を引き起こすことが知られている。
  • *2 遺伝子発現: DNAから特定の遺伝子がRNAに転写されること。転写されたRNAは翻訳されタンパク質が合成され,細胞内で機能する。遺伝子発現のパターンで細胞種や細胞機能が異なっている。
  • *3 擬似時系列解析: 個々の細胞の遺伝子発現の類似性から,遺伝子発現の変化を捉える時間軸を擬似的に作成する解析方法。

論文情報

  • 雑誌名:iScience
  • 論文名:
    Single-cell Transcriptome Analysis Dissects the Replicating Process of Pancreatic Beta Cells in Partial Pancreatectomy Model
    (一細胞トランスクリプトーム解析により部分膵切除モデルにおけるベータ細胞の増殖プロセスを明らかにした)
  • 著 者:Hisato Tatsuoka, Satoko Sakamoto, Daisuke Yabe, Ryotaro Kabai, Unyanee Kato, Tatsuya Okumura, Ainur Botagarova, Shinsuke Tokumoto, Ryota Usui, Masahito Ogura, Kazuaki Nagashima, Eri Mukai, Yoshio Fujitani, Akira Watanabe and Nobuya Inagaki
  • DOI番号:https://doi.org/10.1016/j.isci.2020.101774

2020.12.18

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