研究・採択情報

新しい糖脂質蛍光プローブを開発して,細胞膜の「筏ナノドメイン」を解明-ウィルスや細菌毒素の細胞内侵入機構の解明に新しい光-

 木曽真 応用生物科学部特任教授・京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)教授,安藤弘宗 同准教授,河村奈緒子 同研究支援員,楠見明弘 京都大学iCeMS・沖縄科学技術大学院大学教授,鈴木健一 京都大学iCeMS准教授らの研究グループは,重要な細胞膜構成分子である「ガングリオシド」の細胞膜での振舞いや分布を1分子のレベルで可視化することに世界で初めて成功しました。

 ガングリオシドは,「糖鎖」と「脂質」が結合した特殊な分子であり,ウィルス・細菌毒素などが細胞に侵入する際に重要な足場となる分子集合体「筏ナノドメイン(lipid raft)」の形成に関与していることが示されてきましたが,このドメインの存在自体の直接的な証拠は無く,存否自体が長く論争の的となっていました。本研究では,世界トップレベルの木曽グループの糖鎖合成化学,楠見グループの一分子細胞生物物理学の融合研究により,細胞膜中で短寿命(数百ミリ秒)の筏ナノドメインが形成される様子を初めて捉えることに成功し,その存在を実証しました。
 この成果は,ウィルス・細菌毒素の細胞内侵入を始めとする筏ナノドメインを介して行われる生命現象の機構理解だけでなく,関連疾患に対する薬剤開発においても大きな原動力となることが期待できます。

 本成果は,ロンドン時間2016年4月4日16時(日本時間5日午前0時)に米科学誌 「Nature Chemical Biology」オンライン速報版で公開されました。

木曽グループのメンバー:
 中央・河村研究支援員(論文筆頭著者),
 右・安藤准教授(論文筆頭著者),
 左・木曽特任教授(論文責任著者),
細胞膜での糖鎖1分子イメージングの例
(クリックすると拡大します)

2016.05.23

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