応用生物科学部・伊藤直人准教授が 日本獣医学会賞を受賞しました
このたび,本学応用生物科学部・伊藤直人准教授が日本獣医学会賞を受賞しました。
受賞研究のポイント
- 狂犬病ウイルスの病原性に様々なウイルス蛋白質が重要な役割を担うことを発見し,そのメカニズムの一端を分子レベルで明らかにしました。
- 得られた知見に基づき,従来の狂犬病生ワクチン株よりも著しく強毒化のリスクを減弱した,安全な生ワクチン株の樹立に成功しました。
受賞内容
本学応用生物科学部・伊藤直人准教授が日本獣医学会賞を受賞しました。
獣医学会賞は,獣医学の領域において顕著な研究業績をあげた獣医学会の正会員(応募時,満50歳以下)に毎年2件程度授与されるものです。
公益社団法人日本獣医学会:1885年設立。日本学術会議協力学術研究団体。会員数 3,646名
受賞研究の概要
有効なワクチンが存在するにもかかわらず,発展途上国を中心に毎年5.5万人が狂犬病の犠牲になっていると言われています。安全,安価かつ効果の高い狂犬病ワクチンの開発により犬へのワクチンの普及率を上げること,ならびに狂犬病の治療法の確立が課題として挙げられるものの,狂犬病ウイルスの病原性に関する基盤情報の欠如がこれらを阻んでいます。
伊藤准教授らは,病原性の異なる狂犬病ウイルス株の比較により,これまで重要とされてきたG蛋白質以外のウイルス蛋白質(N,PおよびM蛋白質)も,様々な機序を介して病原性に関与することを明らかにしました(下記,参考文献1・2・3)。さらに,その知見を狂犬病ワクチンの開発に応用し,高度かつ安定に弱毒化された生ワクチン候補株の開発に成功しました(参考文献4)。
参考文献
- 1. Shimizu, K., Ito, N., Mita, T., Yamada, K., Hosokawa-Muto, J., Sugiyama, M., Minamoto, N. Involvement of nucleoprotein, phosphoprotein, and matrix protein genes of rabies virus in virulence for adult mice. Virus Res. 123: 154-160, 2007.
- 2. Masatani, T., Ito, N., Shimizu, K., Ito, Y., Nakagawa, K., Sawaki, Y., Koyama, H., Sugiyama, M. Rabies virus nucleoprotein functions to evade activation of RIG-I-mediated antiviral response. J. Virol. 84: 4002-4012, 2010.
- 3. Yamaoka, S., Ito, N., Ohka, S., Kaneda, S. Nakamura, H., Agari, T., Masatani, T., Nakagawa, K., Okada, K., Okadera, K., Mitake, H., Fujii, T., Sugiyama, M. Involvement of the rabies virus phosphoprotein gene in neuroinvasiveness. J. Virol. 87: 12327-12338, 2013.
- 4. Nakagawa, K., Ito, N., Masatani, T., Abe, M., Yamaoka, S., Ito, Y., Okadera, K., Sugiyama, M. Generation of a live rabies vaccine strain attenuated by multiple mutations and evaluation of its safety and efficacy. Vaccine, 30, 3610-3617, 2012.