学長ブログ

2025年新年互礼会で学長年頭挨拶を行いました

 皆さん明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
 2024年は、能登半島地震に始まり、豪雨災害や、世界情勢の不安定化、政権交代のある中、私たちは、パリ・オリンピック・パラリンピックでの日本人の活躍や大谷選手の躍進、ノーベル平和賞受賞に、大きな自信と勇気をいただきました。
一方、人口減少の続く我が国においては、大学間の連携や統合の必要性は一層高まり、地域社会の中で「人と知を共有」していくためには、個々の大学が点ではなく、大学群という面で地域や社会を支える基盤やプラットフォームに変化していく必要があるとの考えに至りました。

 岐阜大学は、我が国の将来の国立大学の新たなモデルとして、2020年4月名古屋大学との経営統合という極めてドラスティックな変化を経験し、改革と発展が加速されました。東海国立大学機構の掲げるT-PRACTISSという価値創造モデルに沿って、岐阜大学はすべての学部・大学院・部局の総力を結集して、産業・まちづくり、ものづくり・食づくり、医療づくり、人づくりを推進する「ぎふのミ・ラ・イ・エ構想」を打ち立て、全力で走ってまいりました。
 これまでに内閣府による「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」に関連する支援策等を8つ獲得できたことが強い追い風となり、この3年間で、しっかりと基礎づくりができたかと思います。
 岐阜大学の強みが活きる分野として、総合知を基盤として、「ライフサイエンス」、「ものづくり」、「環境・エネルギー」という3つの領域を定め、「教育・人材育成」「研究・価値創造」「社会連携・産学連携」「国際展開」の4つの戦略を軸として取り組みを進めてまいりました。

 昨年1年を振り返ってみます。

1.「ライフサイエンス」においては、糖鎖生命コア研究所(iGCORE)における糖鎖研究と、医・薬・獣・工の連携から生まれたOne Medicineトランスレーショナルリサーチセンター(COMIT)における革新的な創薬シーズの研究開発が大きく発展しています。

  • 糖鎖研究では、糖鎖測定の世界標準化や認知症の新たな知見など進捗が期待されています。
  • COMITでは、東海機構コモンズ債による「医獣薬一体型非臨床研究施設」が2025年3月に竣工予定で、研究の加速が期待されます。
  • また、創発的研究支援事業ではライフサイエンス領域からこれまでに2023年度2名を含む計7名が採択され、地域の大学の中では上位に位置しています。

2.「ものづくり」では、自治体や地域産業界と連携してオープンした国内初の航空宇宙生産技術開発センターにおいて、川崎重工業株式会社、株式会社SUBARU、三菱重工業株式会社と共に、2024年度、NEDO先導研究プログラムに採択されました。

  • さらに地域の製造業の飛躍に貢献するスマート金型や新たな炭素繊維の研 究成果を社会実装につなげる取り組みを展開しています。
  • 関の刃物サステナブル技術革新拠点の整備や、2025年4月より社会システム経営学環に開設される、「もの作り経営学講座」も大きな実績の1つです。

3.「環境・エネルギー」では、気候変動、カーボンニュートラルへの貢献を目指す環境社会共生体研究センターを2024年4月に立ち上げました。

  • 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)や国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けて、水素、アンモニアなどのスマートエネルギーマネジメントやプラズマを活用した研究を名古屋大学と連携して推進しています。

4.「教育・人材育成」においては、昨年は、2つほど大型の予算をいただきました。

  • 1つは、高度人材育成支援と言うことで、情報系の学生数を増やすことが出来ました。学士で80名、大学院で50名、年間おおよそ7000万円で10年間の支援をいただき、今後発展する高度情報専門人材を育成します。
  • 大学院博士課程の学生支援として、年間最大290万円の生活費などの支給を可能にする、次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)を獲得いたしました。
  • さらに、社会システム経営学環では、2025年度から大学院の設置を行い、応用生物科学部も大きく学科などを組織改編し、大学改革に着手しております。
  • 「ぎふ地域創発人材育成プログラム」(SPARC)事業では、2024年3月に、大学等連携推進法人として認定を受け、中部学院大学、岐阜市立女子短期大学とともに連携開設科目を開講できるようになり、大学間連携による教育改革を推進しています。今後さらに参加校が増えることが期待されます。
  • 岐阜県との連携で行っている、「岐阜宇宙プロジェクト研究会」では、高大連携事業として9年目となる「宇宙工学講座」の受講生が通算549名となりました。さらに、小型の衛星設計・製造・打ち上げプロジェクトも順調にすすみ、フライトモデルが、すでにJAXAに引き渡され、2025年4月にはNASAを通じて、SPACE X社により打ち上げられる予定です。
  • ぎふ理系女子はばたき応援プロジェクトも大成功でした。

5.「社会連携・産学連携」として自治体との連携を拡大してきましたが、2024年10月までに岐阜県および県下の42の全市町村との包括連携協定を締結することができ、オール岐阜体制で次の発展に向けたスタートを切ることができました。

  • 産学連携では、2024年2月に開設した地域の産学連携オープンイノベーション拠点「Tokai Open Innovation Complex 岐阜サイト」において新たなイノベーション創出に取り組んでいます。
  • アントレプレナーシップ教育では、岐阜大学公認の起業部の学生をはじめ、多くの学生がビジネスコンテストなどで成果を上げており、2024年までに文部科学大臣賞を含む数々の賞を受賞するなど、実績を重ねています。

6.「国際展開」は、知の循環を国際的に進めるために、大変大きな力を入れています。インド工科大学グワハティ校、マレーシア国民大学とのジョイント・ディグリープログラムの実績をベースに、アメリカの南フロリダ大学、フランスのリール大学、リトアニアのヴィータウタス・マグヌス大学やカウナス工科大学、などと提携するなど、新たな交流の展開を図っています。さらにウズベキスタンのサマルカンド医科大学とも交流が始まり、モロッコのラバト国際大学とはエネルギー工学における連携を進めています。
 このように、2024年は多くの実績が創出されました。

 2025年、目指すものについてお話しします。

  1. 東海国立大学機構は次の10年先、20年先を見据えてどうすべきかを考える時期に入ったと考えます。機構は、プラットフォームとしてのガバナンス、危機管理、人事、財務システム、スタートアップ支援などの効率化などを達成し、両大学の強みを活かした6つの連携拠点の活動を支援してきましたが、これらをさらに改革、発展させていくことは当然です。

  2. その上で、岐阜大学は地域創生に貢献しつつ独自の強みを活かしてさらなる発展を目指すことが必要です。次の10年に向け、岐阜大学は「世界屈指の共創型社会実装大学としてフルモデルチェンジ」を果たし、グローバル企業と連携・共創することによって新たなイノベーション創出を推進すると同時に、その活動を通じて新たな研究課題の創出、教育・人材育成、地域産業の発展につながる好循環を生み出す大学に進化したいと考えます。

  3. 基盤となるのが、航空宇宙生産技術開発センター、地域連携スマート金型技術研究センター、Guコンポジット研究センターというものづくり拠点です。

  4. 更にこれはものづくりのみならず、人文社会科学との連携や、健康医療分野や食品分野、社会基盤、エネルギー、AIなど他分野にも展開し、社会実装と人材育成を全学に展開します。

  5. 本年はいよいよ東海環状自動車道岐阜インターが開通いたします。是非とも大学内の機能的改革とさらにはインフラの整備を皆さんと一緒に考えて、岐阜大学の発展が地域の発展につながり、柳戸地区がライフサイエンス・ものづくりイノベーションパークに変革出きればと思っております。

 以上、岐阜大学のこれまでの実績と2025年の展望を申し上げ、新年のご挨拶とさせて頂きます。
 本年が皆様にとって素晴らしい年になりますよう心よりお祈り申し上げます。

2025年(令和7年)1月6日
岐阜大学長 吉田和弘