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令和5年度岐阜大学大学院入学式 学長告辞

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 岐阜大学大学院へのご入学おめでとうございます。本日642名の令和5年度大学院入学者を迎えることは、私どもにとってこれ以上ない喜びであり、岐阜大学教職員を代表して心から歓迎します。

 皆さんは、3年におよぶコロナ禍に加えて国際紛争勃発などの世界的、歴史的な逆境の中で、学生として社会人として模範となって勉学に励み、見事に志しを貫かれ岐阜大学大学院に入学されました。そして各分野の研究におけるさらなる高みに向かって、夢を描いておられることと思います。これまで皆さんを支えてくださった、ご家族、先生そして関係者の皆様にも心からお祝いと敬意を表したいと思います。
 さて本年度もコロナウイルス感染症対応のため、入学式典は大学院と学部を3部に分けて執り行うこととなりました。祝典の様子をご覧頂くため、You tubeによる中継も行い、祝意を皆さんと分かち合いたいと思います。

 私ども岐阜大学には4つの大学院前期課程、2つの大学院後期課程に加え、岐阜大学を基幹校とする2つの連合大学院、1つの共同大学院があります。大学院前期課程である自然科学技術研究科は、工学、応用生物科学、を融合し、とくにデザイン思考教育を付加価値とする課程であり、岐阜大学の教育で中核を形成する一つです。教職大学院、共同獣医学研究科、さらに連合教職大学院博士課程も合わせ、大学院教育の特徴ある強化が急速に進んでいます。

20230407-6.png  本日から皆さんの学び舎となる岐阜大学とはどんな大学なのかを、まず知っていただきたいと思います。

 さて岐阜大学の起源は、1873年の岐阜師範学校に始まり、実に150年の歴史を有しております。そして、2020年4月、岐阜大学は名古屋大学との法人統合を果たし、新たに東海国立大学機構を設立し、本日は機構として4回目の入学式となりました。
 東海国立大学機構が掲げる「Make New Standards for the Public」というミッションを共有し、その上で「学び、究め、貢献する」という本学の理念のもと、ビジョンを「地域共創、特色ある研究、イノベーション、教育を戦略的に推進し、地域と人類の課題解決に貢献する『地域活性化の中核拠点』となる」と定め、ビジョンを実現するための戦略を策定し、ステークホルダーの皆さんと一緒に新たな時代を切り開くこととなりました。
 本学の強みである、「産業・まちづくり」、「ものづくり」、「食づくり」、「医療づくり」、「人づくり」の分野でステークホルダーとの共創のもと、地域社会への教育・研究・社会貢献などから生まれる成果が地域を変えていくこの好循環を、「ぎふのミ・ラ・イ・エ構想」(Migration, Laboratory, Innovation, Education)と名づけ、岐阜大学の価値創造のモデルとして位置づけました。「若者の夢を実現する岐阜大学、地域づくり」を実現し社会変革の駆動力として成長し続ける経営体」に向けた変革と「持続可能な研究大学」への発展を目指しています。
20230407-5.png  東海国立大学機構となって3年間、岐阜大学は大きく発展しました。何が変わったかをお話しします。
 第一にあげられることは、両大学の強みを結集した、東海国立大学機構直轄拠点の充実です。その中でも特筆すべきは、糖鎖生命コア研究拠点の発展をあげることができます。糖鎖分野における世界トップレベルの研究拠点として、国家プロジェクトである大規模フロンティア事業「ヒューマングライコームプロジェクト」を担当する運びとなりました。岐阜大学の誇りであります。
 二つ目は、航空宇宙研究教育拠点の実績と発展です。東海国立大学機構と岐阜県が内閣府の支援を得て、航空宇宙産業を中心としたさまざまなものづくり企業に貢献できるサイバー・フィジカル・ファクトリーを実現するための研究開発と人材育成を進めています。
 研究に関して三つめの強調したい取り組みが、医学・獣医学・薬学による先進医療と創薬、応用生物科学・工学部による食・農・バイオエンジニアリングを加えた革新的なライフサイエンス拠点の構築です。2023年1月にはOne Medicineトランスレーショナルリサーチセンター(COMIT)を立ち上げ、研究基盤の整備と地域一体型の臨床研究体制を整え、東海国立大学機構 創薬・先端医療研究戦略構想を実現すべく研究活動が活発になっています。
 一方、カーボンニュートラルおよび気候・環境変動対策もSDGs実現のために重要な課題です。今後の発展が楽しみです。

 我が国や今後のアジア諸国では、少子高齢化が益々進みます。新型コロナウイルス感染症の影響等のような世界経済の減速リスクがある中で、我が国は、社会課題を経済成長のエンジンへと押し上げていくために、科学技術・イノベーションの力で行う施策をとることになりました。具体的には、研究力を更に強化し、世界トップレベルの大学と地域変革を駆動する大学の育成をめざしています。すなわち、国際卓越研究大学と地域中核大学の形成です。従って、博士前期課程修了後、コースによっては博士後期課程への進学も大変魅力的な進路です。私共もその支援を最大限に行う覚悟です。
 専門知識を身につけることは重要ですが、それだけでは十分とは言えません。コロナ禍をはじめとして気候変動、自然災害、貧困、国際紛争などの危機に直面する世界は、今まさにパラダイムシフトを迫られています。かつて経験したことがない課題や革新的な取組に対し、従来の細分化された知識で対応することは困難であると言わざるを得ません。これまでと同様に、「リベラルアーツ」という観点からの研鑽も積んでください。

   大学院生の時に行った基礎研究は時代を経て、20年、30年後にようやく社会に貢献することが多いのも事実です。私自身は消化器外科医でありましたが、大学院修了後も新たな標準治療の開発に向けて、努力をしておりました。そのときの基盤は、大学院生の時に学んだ考え方や仮説を一つ一つ証明していくことの積み重ねでありました。そして、自分の開発した治療が、基礎研究での立証、臨床試験として実臨床での実証につながり、開発から20年経って、胃癌治療のガイドラインを更新する新たな治療となったのは、感無量でありました。
20230407-8.png  皆さんもこれから研究をする上で、必ず越えなくてはならない壁や難題に遭遇するかと思います。そのときは、決して諦めず「初志貫徹」を目指して努力してください。何事も継続こそが物事を成就させてくれる秘訣です。

 最後に、比叡山を開かれた伝教大師・最澄(でんぎょうだいし・さいちょう)の著書で、「山家学生式(さんげがくしょうしき)」という書物の中で、小生の好きな言葉を皆さんに送りたいと思います。
 「一隅(いちぐう)を照らす、これ則(すなわ)ち国宝なり」という言葉です。一隅とは、片すみという意味です。すなわち、「片すみの誰も注目しないような物事に、ちゃんと取り組む人こそ尊い人」、「お金や財宝は国の宝ではなく、家庭や職場など、自分自身が置かれたその場所で、精一杯努力し、明るく光り輝くことのできる人こそ、何物にも代え難い貴い国の宝である。」ということです。
 これからの長い人生の中で、どんな立場であろうと、皆さんが精一杯世の中で活躍できるように、しっかりと努力してください。
 皆さんは本日から、大学院生です。「大学で何を学ぶか、何のために学ぶか、学んだものをどう社会で活かすのか」、この問いを常に考えながら研究に励んでください。私共も皆さんと一緒に考えたいとおもいます。

 それでは本日から皆さん一人一人において実り多いキャンパス生活が送れますよう心からお祈りして、学長の告辞とさせていただきます。

2023年(令和5年)4月7日
岐阜大学長 吉田和弘

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