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メラノーマ治療に有効なRNA医薬を開発【連合創薬 赤尾教授・北出教授ら】

研究成果のポイント 】               ・  【 研究成果
研究の特徴 】                   ・  【 発表論文

研究成果のポイント

  • 文部科学省の特別経費(H23~25)による支援で,臨床応用が可能な抗がん活性の強いRNA医薬の開発に成功
  • RNA干渉の原理に基づく化学修飾マイクロRNAによる次世代医療への展開が期待される画期的なメラノーマ治療薬候補の開発に成功

研究成果

 このたび,本学大学院連合創薬医療情報研究科所属の赤尾幸博教授と本学工学部及び大学院連合創薬医療情報研究科所属の北出幸夫教授らの研究成果が米国遺伝子治療学会誌(Molecular Therapy)オンライン版に4月30日付で掲載されました。
 この研究成果は,近年増加傾向にある皮膚がん・メラノーマの新しいRNA医薬の候補分子を探索していたところ,新規に開発した化学修飾マイクロRNA(人工miRNA-205)が驚異的な生体内安定性を示し,担癌マウスのメラノーマに対する顕著な増殖抑制効果を示したことからメラノーマ治療薬として有望であることを見出しました。
 この成果を基に本学動物病院において,近く自然発生のイヌ・メラノーマを対象とした臨床試験が開始され本治療薬候補の安全性および抗がん活性を評価する予定です。

研究の特徴

 この研究は,赤尾教授・北出教授らが開発した化学修飾マイクロRNA(人工miRNA)を用いることで皮膚がんであるメラノーマの先進治療が可能となったものです。
 2006年のノーベル医学生理学賞がRNA干渉に与えられたように,RNA分子の多様な機能が解明されつつあります。近年,マイクロRNA(miRNA)が発見され,関連するメッセンジャーRNA(mRNA)の発現制御に基づく発生や細胞分化に重要な調節因子であることが判明し,特に癌の発生と細胞内miRNAレベルの変動との因果関係が解明されてきました。
 このような背景の下,RNA医薬を推進する上で最も解決されなければいけない問題としてRNA分子の核酸分解酵素に対する安定性や細胞膜透過性の向上などがあります。本研究チームでは,既にこれらの問題点を解決する1例として,核酸オリゴマーの化学修飾が有効であることを示してきました。
 また,赤尾教授らは動物病院(丸尾幸嗣教授・森崇准教授)との共同研究で,皮膚がんであるイヌ・メラノーマとヒト・メラノーマを比較腫瘍学的見地から解析し,どちらの腫瘍においてもマイクロRNA-205(miR-205)の顕著な発現低下が見られ,がん抑制遺伝子として働いていることを明らかにしています。この発見は,イヌのメラノーマに対するRNA医薬を開発すれば,ヒト・メラノーマに有効な治療薬の開発に結びつくことを意味しています。一方,北出教授らはマイクロRNAを化学修飾することで核酸分解酵素に対して安定性や細胞膜透過性の向上などの高機能化に成功しています。さらに,このような高機能化によりマイクロRNAの抗がん活性の増強が期待されることを発見しています。
 これまでの成果に基づき,イヌ及びヒトに対して共通な癌抑制遺伝子であるmiRNA-205の化学修飾体を開発することで,諸問題点を克服した画期的なヒト・メラノーマ治療薬候補の開発に成功したことが,今回の研究成果に繋がりました。

発表論文

  • 著 者 : Shunsuke Noguchi, Junya Iwasaki, Minami Kumazaki , Takashi Mori, Kohji Maruo, Hiroki Sakai , Nami Yamada , Kazuyuki Shimada, Tomoki Naoe , Yukio Kitade and Yukihiro Akao
  • 論文タイトル : Chemically Modified Synthetic microRNA-205 Inhibits the Growth of Melanoma Cells In Vitro and In Vivo
  • 掲載誌 : Molecular Therapy, 2013(Published online: 30 April 2013 | doi: 10.1038/mt.2013.70.)


2013.05.30

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